救急現場で患者を観察した際に、“Af”を疑い心電図を貼るも、“f波(ギザギザ)”がない経験はありませんか?
結局、心電図はわからないので報告書に“R–R不整”、“不整脈あり”と記載していませんか?
その原因は“見る誘導”が違うだけです。
原因の多くが不整脈を見るから、四肢誘導だけ貼っていたり、教科書通りの心電図しか知らないことにあります。
今回は“Af”について解説したと思います。
心房細動(Af)の病態と心電図!
引用:救急救命士標準テキスト
Afの特徴!
- f波はV1でよく見える。
- 心房細動が72時間を超えて継続すると血栓を形成しやすくなる。
- 自覚症状として「動悸」「息切れ」「めまい」。
心房細動とは不整脈の1つで、心房内での電気活動が乱れ痙攣しているように細かく震えています。
肺静脈付近の血管から電気信号が無秩序に発生することで起こります。
種類としては「発作性」、「持続性」、「長期持続性」の3種類に分けられ、72時間を超えて持続すると血栓を形成し塞栓症の原因となります。
心房細動の種類 | 発作の継続時間 |
---|---|
発作性心房細動 | 7日以内に治る |
持続性心房細動 | 7日を超え継続 |
長期性心房細動 | 1年以上継続 |
自覚症状としては「動悸」、「息切れ」、「めまい」などが挙げられ、中には無自覚の人もいます。
高度の頻脈あるいは徐脈が続くと心不全状態になるよ!
心房細動(Af)の判読ポイント!
心房細動(Af)について探してみるとこのように記述がありました。
P波が消失し、細かい鋸状の心房細動波(f波)の連続を認める。QRS波の間隔はまったく不規則になり、絶対性不整脈と呼ばれる。心拍数は多い例と多くない例とがある。経過の長い例では心房細動波が明らかでないことがある。
引用:救急救命士標準テキスト
この文章を読むと、Af = f波(全誘導?)に見えてしまい、Afを見逃してしまうので、ポイントを整理しましょう。
Afの5つの特徴!
- P波がない。
- R–R間隔が不整。
- f波がある。
- f波はV1でよく見える。
- Af ≠ tachycardia
よくイメージする心房細動(Af)の波形です。
全ての誘導でf波があり、R–R間隔が不整、P波がありません。
不整脈、R–R不整と記入してしまう心房細動(Af)が以下になります。
P波は認めずR–R間隔も不整ですが、f波はV1誘導でのみ顕著、脈拍も87回/分と100回以下。
心房細動(Af)と間違いやすい波形
間違いやすい波形!
- 心房粗動(AFL)
- 心房期外収縮(APC)
- 心房頻拍(AT)
- 房室ブロック(AVB)
- 洞不全症候群(SSS)
上記の心電図は救急現場で心房細動(Af)と間違いやすい波形になります。
上記の波形と心房細動(Af)の大きな違いとして、心房細動(Af)は絶対的な不整脈ということです。
絶対的とは規則性などが全くないということです。
心房細動(AFL)
心房細動(Af)と比べて、粗いf波があり、R–R間隔は比較的整。
心房期外収縮(APC)
本来の洞結節からの電気的興奮より早く、心房内および房室接合部付近に起こる異常興奮です。
頻発する期外収縮は心房細動(Af)を引き起こすことも。
心房期外収縮は通常の波形とにているね!
心房頻拍(AT)
房室ブロック(AVB)
Ⅰ度:PR間隔の延長のみ。
Ⅱ度(ウェンケバッハ型):PQ間隔が徐々に延長し、やがてQRS波形が欠損。
Ⅱ度(モビッツⅡ型):PQ時間が一定で、突然QRS波形が欠損
Ⅲ度:P波とQRS波がそれぞれのリズム(対応関係なし)で規則的に出現。Wide QRS(徐脈)とNarrow QRS(頻脈)がある。
洞不全症候群(SSS)
洞不全症候群は、ルーベンシュタイン(Rubenstein)分類により、I群からIII群まで分けられています。
- Ⅰ群:特定原因のない洞性徐脈(HR<50/min)持続性洞性徐脈
- R–R間隔の延長
- Ⅱ群:洞停止・洞房ブロック
- 洞停止:P波が一定のリズムで現れず、PP間隔が延長する
- 洞房ブロック:P波が一定のリズムで現れず、PP間隔が延長する。延長したPP間隔のそれまでのPP間隔の2倍、もしくは整数倍となる 実際には、洞停止と洞房ブロックとの鑑別は難しい。
- Ⅲ群:徐脈頻脈症候群
- Ⅰ・Ⅱ群のほかに心房粗動(AFL)、心房細動(AF)、発作性上室頻拍(PSVT)といった頻脈を伴うもの
救急現場で遭遇する不整脈に対する対応は?
- 心電図は12誘導心電図でみるようにする!
初期評価で脈拍に不整または、発生概要で「動悸」「頭痛」「麻痺」「呂律難」などの症状がある場合には心電図の装着が必要になります。
心電図を貼るのであれば、12誘導心電図での観察が必要です。
心房細動(Af)や心筋梗塞(MI)のように四肢誘導だけでは不十分だからです。
救急隊で12誘導心電図を装着することで、心筋梗塞やMI、不整脈、電解質異常などの診断・判別に有用な情報を医療機関に伝えることができ傷病者の治療が早くなります。
また、院内でチェックするFACE2–ADスケールでAfの項目もあり、心電図を伝送できない場合重要な所見を見逃すことになってしまいます。
上記のことから、救急隊が心電図の確認を行う場合には12誘導心電図での観察をしましょう。