小児。乳児のCPA事案に出動した際に、CPR開始基準に迷ったことはありませんか?
おそらく、心拍数が60回/分未満であればCPR開始と覚えている人は多いのではないでしょうか?
実際に問題形式で確認したところ、半数以上の人が心拍数60回/分未満だとCPR開始と判断していました。
今回は小児・乳児のCPR開始基準やPCPRについて解説したいと思います。
事案としての遭遇は少ないかもしれませんが、実際にその現場に行って不安にならないようしっかりポイントを抑えましょう。
小児・乳児の心停止判断
小児・乳児も成人同様に、呼吸と脈拍の確認を行い判断します。
胸と腹部の動きを観察し動きが見られない場合や、死戦期呼吸を認める場合には心停止と判断します。
脈拍の確認について小児では総頸動脈を、乳児では上腕動脈または大腿動脈で確認を行います。
脈拍の触知が不安な場合は、呼吸停止をもって心停止と判断しましょう。
重要なのは脈拍の確認でCPRを遅らせないことだね!
しかし、呼吸の確認に不安があるも脈拍を触知できる場合は、脈拍60回/分未満で人工呼吸を行ったにも関わらず循環が悪い場合CPR開始します。
小児・乳児のCPR開始は脈拍60回/分未満?
小児・乳児の脈拍の正常値は成人と比べて早いため、脈拍60回/分未満だと生命が切迫している状態です。
しかし、ここで勘違いとして多い内容が「脈拍60回/分未満 = CPR開始」ということです。
生命が切迫している状態ではありますが、救急隊の処置として正しいのは“気道確保と人工呼吸”。
それでも、脈拍が60回/分未満で循環不全を認める場合は胸骨圧迫を開始しましょう。
「脈拍60回/分未満 = 心停止」ではないと言うことだね!
私が以前働いていた消防本部でも、「人工呼吸または高流量酸素投与後も循環不全が続いていた場合」CPRでした。
小児・乳児の人工呼吸
呼吸がなく十分な速さの脈拍が確認できた場合には人工呼吸を実施しましょう。
回数は1分間に12〜20回の速さになります(3〜5秒に1回のペース)。
2分おきに十分な速さの脈拍があるか確認しましょう。
呼吸回数が10回/分未満の除呼吸でも人工呼吸を考慮しよう!
小児・乳児のCPR時の人工呼吸は1人法の場合は「30:2」。2人法だと「15:2」で実施。
成人同様マスクフィッとが重要で、前上からマスクを当て、軽く頭部後屈させることで上手く換気ができます。
小児・乳児の胸骨圧迫のポイント!
小児の胸骨圧迫も成人と同様に、1分間に100〜120回/分の早さで行います。
圧迫する深さは胸の厚さの1/3が沈む程度となります。
小児の圧迫位置は胸骨下半分で手掌基部を使います。
基本的には片手で実施しますが、女性で圧迫の強さが足りないと感じたら成人同様に両手でも大丈夫です。
乳児に関しては、乳首を結んだ線の真ん中1指下を圧迫します。
引用:第9版 救急救命士標準テキスト
2人で実施する場合は胸郭を両手で包み、両母子で胸骨圧迫する方法が推奨されています。
引用:第9版 救急救命士標準テキスト
主要参考・引用文献
- 第9版 救急救命士標準テキスト
- JRC蘇生ガイドライン「第3章 小児の蘇生(PLS:Pediatric Life Support)
[https://www.jrc-cpr.org/wp-content/uploads/2022/07/JRC_0151-0229_PLS.pdf],20237月13日閲覧