救急隊が現場で心疾患や不整脈性の脳梗塞などを疑った際に心電図を記録します。救急隊は心電図を見てどこまで理解できていますか?
私も救急隊として働いていた時は、心電図は苦手な分野でした。こういう波形の変化があったらここの血管が詰まっているなど全く理解できませんでした。
このような悩みを持っている救急隊員、救命士の方は多いのではないでしょうか?
心電図を読めるようになることで、病態の理解や傷病者の状態を把握でき、それが活動方針、病院選定など現場活動に活かすことができます。
今回は心電図の基本をおさらいし、正常心電図なのか、異常心電図なのかしっかり区別できるようにしましょう。
心電図を装着することで何がわかるの?
心電図を装着してわかること、傷病者のメリット!
- 不整脈と伝導障害
- 心筋の虚血障害
- 心房・心室の肥大
- 電解質異常
- 根本的治療までの時間短縮につながる
心電図は、心臓の電気活動を測定して記録する検査方法のことです。心臓は、正常に機能するために一定のリズムで収縮と弛緩を繰り返します。
この収縮と弛緩の過程で、心臓は電気信号を発生。心電図検査では、皮膚表面に電極を取り付け、この電気信号を測定してグラフに記録します。
心臓の機能や異常を評価するために用いられます。例えば、不整脈や心筋梗塞など、心臓の異常を検出するために行われることがあります。
救急隊が心電図を装着するタイビングとしては、心疾患や脳梗塞、大動脈解離、失神など傷病者に異変を感じた時になります。
また、現病歴や既往歴・服用薬、発生概要などから装着することもあります。
救急隊が現場で心電図を記録しどういった波形かを伝えることで、「Door to Balloon Time」の短縮に繋がったりと傷病者の根本的治療が早くなったりします(他の病態でも短縮することがあります)。
近年では12誘導心電図伝送装置など、現場で記録した心電図を病院に伝送できるようになっています。
なので、救急隊は「装着時」と「病院到着前」の心電図と最低2回※1伝送するようにしましょう。また、伝送装置がない場合は「装着時」と「病院到着前」の2回記録紙にで出しておきましょう。
心電図を記録することで、病院選定や根本的治療が早くなったりメリットが多いね!
※1 心電図の変化が分かるため2回必要になります。1枚の記録紙では分からないこともあります。また、変化がないことも重要な情報。
基本の心電図波形
- 刺激伝導系の流れ洞結節→房室結→ヒス束→右脚・左脚→プルキンエ線維。
- P波の始まりと次のP波を直線で結んだ線を“基線”。
- 通常の心電図記録紙の速度と感度は、速度が1マスで“0.04秒”、感度が1マス“0.1mV”。
- 3〜5マスの範囲であれば心拍数は60〜100回/分。
刺激伝導系と心臓のメカニズム
刺激伝導系は心内膜下に分布する特殊心筋で、「洞結節」「房室結節」「ヒス束」「右脚・左脚」「プルキンエ線維」からなります。
各部位の役割!
洞結節 | 心臓の収縮のリズムを決めるペースメーカー。洞結節の興奮が心房金全体に広がり、心房筋を収縮させる。 |
房室結節 | 洞結節から興奮が伝わり、ヒスに伝える。この間に心房は収縮を完了。 |
ヒス束 | ヒス束は房室結節からはじまり、心室中隔膜性部の後縁に沿って下行し,次いで心室中隔筋性部の上端で右脚と左脚に分かれる。 |
右脚・左脚 | 右脚は、右心房からの刺激を受けて右心室に信号を伝えます。左脚は、左心房からの刺激を受けて左心室に信号を伝えます。 右脚と左脚は、心臓の収縮を同期させるために非常に重要な役割。 |
プルキンエ線維 | 心臓のリズムを調節するために、心臓の上部から下部にかけて電気信号を伝える役割。 |
心臓は刺激伝導系の働きで効率よく血液を送り出せます。心房が収縮して血液を心室に送り、心室の収縮が心尖部からはじまり心基部へと向かうので、血液は大動脈および肺動脈のほうへと押し出されます。
U波はT波の後に出現する陽性波で、T波の高さの半分を超えません。正常で見られる場合は、陽性(基線より上)で、V2・V3あたりが最も目立ちます。
U波の増大は低カリウム血症、陰性U波を特徴とする疾患として、心筋虚血、狭心症、心筋梗塞、左心室肥大、高血圧、大動脈弁閉鎖不全症などがあります。
U波はT波より小さく見えないこともあるよ!
心電図はP波の始まりと次のP波を直線で結んだ線を“基線”と言います。基線より上向を“陽性波”、基線より下向きを“陰性波”というので覚えておきましょう。
心電図の基本と波形の時間
通常の心電図記録紙の速度(横)と感度(縦)は、速度が1マスで“0.04秒”、感度が1マス“0.1mV”となっています。
1マスの長さが1mmの正方形。速度は大きいマス1つで“0.2秒”、これが5つあると“1秒”になります。
つまり、QRS波形が1マス毎に出ているのであれば心拍数は300回/分になります。
- 2マス毎:心拍数150回/分
- 3マス毎:心拍数100回/分
- 4マス毎:心拍数75回/分
つまり、3〜5マスの範囲であれば心拍数は60〜100回/分ということが分かります。
QRS波形が不規則な場合は、6秒間(150mm)間でQRS波形を数え、10倍するとだいたいの心拍数が出るよ!
<PQ時間>
P波の始まりからQ波の始まりまでの間隔を言います。PQ時間は0.12〜0.20秒になります。
PQ時間の延長や不規則な場合は心房から心室へ正しく興奮が伝わっていないと考えられます。
<QT時間>
QRS波始まりからT波の終わりまでの間隔を言います。QT時間は0.36秒〜0.44秒が正常。
T波の終わりがRR間隔の半分を超えていれば、QT延長と判断します。
<ST部分>
S波の終わりからT波の始まりを言い、S波の終わりとT波の始まりを“Jポイント”と言います。ST変化を見る際は“Jポイント”が基線より上がっていればST上昇、基線より下がっていればST低下と判断。
<P波>
P波は心房の興奮(脱分極)を示し、陽性(上向き)で、正常値は0.06秒〜0.10秒になります。
<QRS波>
QRS波波心室の興奮(脱分極)を示し、正常値は0.1秒以下になります。
終わりに
当記事での救急隊の活動に関しては私の考えや、消防吏員として勤務してた際の考え方になります。他救急隊が活動する場合は地域の特性やプロトコールが優先されます。
なので、当ブログでの救急活動に関しては参考程度とし、良ければ現場活動に活かしてください。