STが上昇していると聞くと、[]このような形をイメージする人が多いのではないでしょうか?
救急現場でたびたび遭遇するST上昇ですが、STが上がった形だけを探すと見逃す恐れがあります。
今回は心電図が苦手な隊員でも、STの変化を見抜く簡単なポイントを解説します。このポイントを抑えるだけで現場でSTの変化を見逃さず、適切な病院に適切な情報を送ることができます。
疾患についての細かい説明ではないので省きたいと思います。しかし、この記事を読むことでST変化に関しては読めるようになるで、自信がない人は勉強してみましょう。
心電図は波形だけ覚えても現場では通じないから重要項目だね!
STの変化は“Jポイント”で判断
STの変化の確認方法!
- “Jポイント”とは、心電図上で“QRS”と“ST”の接合部。
- “Jポイント”が基線より上であればST上昇、低ければST低下と判断。
この記事の最も重要な部分である“Jポイント”です。初めて聞く人も多いでしょうが簡単に覚えられます。
“Jポイント”とは、心電図上で“QRS”と“ST”の接合部になります。“Jポイント”が基線より上昇していればST上昇。下降していればST低下と判断します。
STの変化は“Jポイント”見たらすぐに分かるね!
STの変化は何を意味する?
STの変化で分かること!
- ST-Tは、心室筋の状態がわかる。
- ST上昇は、心筋梗塞、心筋炎、ブルガダ症候群などで見られます。
- ST低下は心臓の筋肉の血液の流れが悪い場合(心筋虚血)や、心臓の筋肉が厚くなった状態(心肥大)。
ST上昇する疾患の代表として、急性心筋梗塞、異型狭心症:冠動脈の閉塞によるST上昇などが挙げられます。他にも、タコツボ型心筋症や低体温、心膜炎でもSTの変化を見ることができます。
ST-Tは、心室筋の状態を読み解くことができる心電図変化。
救急隊はST上昇があればまずは“心筋梗塞”を疑いましょう。併せて胸痛などの症状を伴っていれば12誘導心電図の装着は必須となります。
STの変化は記録した1枚の紙では分からないこともあるよ!人によっては胸痛などの症状がないから注意が必要!
<ST上昇>
心電図の波形でST部分、つまりJポイントが基線より高くなった状態。
心筋梗塞、心筋炎、ブルガダ症候群などで見られます。
<ST低下>
心電図の波形でST部分、つまりJポイントが基線より低くなった状態。
心臓の筋肉が虚血した場合や、心臓の筋肉が肥大化(心肥大)した際に見られます。
また、貧血や電解質異常があるときにも見られるため、症状や現病歴、発生概要などしっかり確認ましょう。
心電図はこう見る
心電図の見方!
- 「Ⅱ・Ⅲ・aVf」のST上昇が下壁梗塞。
- 「Ⅰ・aVl・V5・V6」が側壁の梗塞。
- 「V1・V2・V3・V4」が前壁梗塞。
- 心電図は「Ⅱ・Ⅲ・aVf」、「Ⅰ・aVl・V5・V6」、「V1・V2・V3・V4」のセットで確認。
- Ⅱ誘導はわかりやすい波形で最初に見る誘導。
ST上昇型心筋梗塞(STEMI)では、STの変化は1つの部位ではなく、少なくとも2つ以上が同時に上昇しています。
実際にST上昇型心筋梗塞(STEMI)では2つ以上の連続した誘導でのST上昇が必要条件となっています。
一緒に上昇する誘導が「Ⅱ・Ⅲ・aVf」のST上昇が下壁梗塞。「Ⅰ・aVl・V5・V6」が側壁の梗塞。「V1・V2・V3・V4」が前壁梗塞になります。
つまり、Ⅱ誘導だけがST上昇している心電図はST上昇型心筋梗塞(STEMI)とは言い難いということです。
心電図の見方としては、「Ⅱ・Ⅲ・aVf」、「Ⅰ・aVl・V5・V6」、「V1・V2・V3・V4」のセットで確認するといいでしょう。
また、最初に見る誘導としては、Ⅱ誘導が最も分かりやすい形をしてるので、Ⅱ誘導からの確認をおすすめしています。
心筋梗塞に限らず、普段からセットで心電図を見ると良いね!
おまけ!
心筋梗塞の確認方法には“鏡像変化(ミラーイメージ)”があります。
“鏡像変化(ミラーイメージ)”はST上昇した誘導とは別でST低下が起こっているということです。
ST上昇型心筋梗塞(STEMI)では常に解剖学的に反対側の誘導にSTの低下が生じるはずであり,気を付けてみれば90%以上のSTEMI症例で何らかの鏡像変化が見られるはずです。
早期脱分極,心膜炎,左室瘤,というようなよくSTEMIと間違える疾患では鏡像変化を来すことがあり得ないので(心膜炎でのaVR誘導は例外),STEMIの診断を確定させようとするとき役立ちます。
部位 | 前壁 | 下壁 | 側壁 | 後壁 |
---|---|---|---|---|
ST上昇 | V1〜V4 | Ⅱ・Ⅲ・aVf | Ⅰ・aVl・V5・V6 | V7・V8・V9 |
鏡像変化 ミラーイメージ | Ⅱ・Ⅲ・aVf 約30%に認める。 | aVl ST上昇に先行し出現。 特異度は低い。 | Ⅲ・V1 | V1〜V3 ST低下 R波増高 T波上向 |
特徴 | 右室梗塞合併に注意 (V3R・V4R) |
必ずしも鏡像変化があるわけではないけど、あれば確定的だね!