電解質異常の分野は苦手意識を持っている人が多いのではないでしょうか?
私も病院実習の際に、Naの数値が…、Mgの数値が…、Kの数値が…など普段耳にしない単語に戸惑いを覚えました。
よく分からないまま現場で活動していましたが実は重要な項目ということに退職して気づきました。
電解質異常だけでは覚えるのは難しいので、今回は意識障害+電解質異常のフォーカスをあて記事にしました。
意識障害の発生機序は3つ!
<脳血流障害>
脳は脳血液自動調節機能により平均血圧60〜150mmHg間で、血管を収縮させ一定の脳血液量を維持します。
しかし、高度の血圧低下等の理由により血流が保てなくなると、意識障害をきたします。
<脳代謝・神経伝達障害>
神経細胞が利用できるエネルギーはブドウ糖(飢餓時はケトン体も利用)。
低血糖状態になるとエネルギー不足で意識障害が発生するんだね!
高度な低血糖状態が数時間続くと、脳に不可逆的なダメージを残します。
また、低酸素血症、体温異常、肝不全、薬物、血清電解質以上でも脳細胞の代謝や神経伝達の障害を通じて意識障害を呈します。
<脳幹障害>
脳幹には重要な機能が集中しており、小さな病変でも意識障害が起こしやすいです。
外傷や出血、梗塞により、脳幹網様体が破壊または圧迫されることで意識障害が発生。
脳幹網様体の機能の1つに「意識の保持」があるね!
意識障害をきたす代表的な電解質異常
低血糖については過去記事を参照→[https://qq-119.com/364/paramedic/]
引用:J-STAGE「電解質異常 専門医部会 シリーズ:内科医に必要な救急医療 電解質異常 沼部敦司」
高ナトリウム血症
高Na血症は、高張性脱水またはナトリウム過剰接種が原因となります。
中枢神経症状、尿崩症、利尿薬投与、発熱、発汗、小児の下痢で引き起こされます。
症状としては、意識障害、痙攣、筋力低下、四肢反射の亢進などの神経症状。
脱水を伴う場合には口渇、皮膚乾燥、乏尿などの症状がみられます。
高張性脱水は、体内の水分が不足し、その結果血液中の溶質(ミネラルや電解質)の濃度が上昇する状態を指します。
ナトリウムも失われるけど、それ以上に水分が喪失してるってことだね!
高張性脱水は、さまざまな状況や疾患によって引き起こされることがあります。
主な原因を以下にまとめました。
- 不適切な水分摂取: 十分な水分を摂取しないことが高張性脱水の主な原因です。特に暑い気候や運動後など、水分摂取が不足すると高張性脱水が発生しやすくなります。
- 嘔吐や下痢: 嘔吐や下痢によって大量の水分が失われると、体内の水分が減少し高張性脱水が引き起こされます。
- 腎機能障害: 腎臓が適切に機能しない場合、尿中に十分な量の水分を排泄できず、高張性脱水が発生することがあります。
- 糖尿病: 糖尿病患者の一部は、高血糖によって大量の尿が排泄され、それに伴って水分も失われるため、高張性脱水が発生する可能性があります。
高張性脱水の症状には、口渇、尿量減少、皮膚乾燥、頸静脈虚脱、めまい、倦怠感などが含まれます。
重度の場合、意識障害や血圧の低下などが起こることもあります。
低ナトリウム血症
低ナトリウム血症は、血液中のナトリウム濃度が低下する状態を指します。
ナトリウムは体内の電解質の一つであり、細胞の機能や体液のバランスを維持する上で重要な役割を果たしています。
Naの喪失または水分の増加により発症。ナトリウムの喪失は腎性と細胞外液の喪失に分けられます。
低Na血症の主な原因としては以下のようなものがあります:
- 過剰な水分摂取: 大量の水を摂取することにより、ナトリウムの濃度が希釈されて低下することがあります。特に過度な水分摂取がある場合に発生しやすいです。
- 失われた塩分の代替: 汗や嘔吐、下痢などによって体内から塩分が失われ、その代わりに水分だけが摂取されると、Na濃度が低下します。
- 腎機能障害: 腎臓の障害により、ナトリウムの排泄が過剰になる場合があります。特に腎機能が低下している場合に注意が必要です。
- 利尿薬の使用: 利尿薬を使用することによって、尿の排出量が増加しNaも一緒に排出されるため、低Na血症が起こる可能性があります。
細胞外液を喪失する原因として、嘔吐、下痢、熱傷、腹膜炎、重症外傷によるものがあります。
水分過剰の原因として、肝硬変、ネフローゼ、うっ血性心不全などが挙げられます。
症状として、全身倦怠感、脱力感、意識障害、深部腱反射の低下、呼吸困難、嘔気・嘔吐、低体温などがみられます。
高カリウム血症
カリウムは細胞内に多く含まれ、連想される疾患がクラッシュ症候群ではないでしょうか?
細胞が何らかの原因で壊死し、その後血流が再開されると大量のカリウムが循環血液中に流入し、高カリウム血症を引き起こします。
主な症状として、心電図上でのテント状T波、筋脱力感。
血清カリウムが6mEq/L以上では四肢の痺れ、下痢、乏尿、呼吸困難。
7mEq/L以上になるとQRS幅が広くなり、さらに心室細動を起こし心停止に至ります。
長時間圧迫により発症した場合は、救出前に1,000〜2,000mlの急速輸液を実施しましょう。
急性腎不全を起こした場合、心不全を合併することがあるので傷病者の状態を確認が必要です。
クラッシュ症候群の参考過去記事→[https://qq-119.com/589/circulation-2/]
主要参考・引用文献
- 第9版 救急救命士標準テキスト
- J-STAGE「電解質異常 専門医部会 シリーズ:内科医に必要な救急医療 電解質異常 沼部敦司」
[https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/101/6/101_1698/_pdf],2023年8月26日閲覧