エピペンとは、アナフィラキシーという重篤なアレルギー反応が起こった時に、自分でアドレナリンを注射できるようにした製品です。
アナフィラキシーは、食物や薬、虫刺されなどが原因で、呼吸困難や血圧低下などの症状が急激に現れることがあります。
エピペンは、このような状況で命を救うために使用されますが、一般市民でも緊急であれば使用することができることを知っていましたか?
この記事では、エピペンの使用に関する法律やガイドライン、注意点などをまとめてご紹介します。
エピペンってどんな薬剤?
アナフィラキシーとは短時間に全身に現れる急性のアレルギー反応。
エピペンとは、アナフィラキシー発症時の治療に用いられるアドレナリン自己注射用キットで、アドレナリン薬剤と注射針が内蔵されています。
体重30kg以上であれば「エピペン®注射液0.3mg」。
体重15kg以上30kg未満であれば「エピペン®注射液0.15mg」が処方されています。
アドレナリンの血中濃度は筋注後10分程度で最高になり、40分程度で半減。
また、アドレナリンの効果は短時間で消失するため、症状が治療抵抗を示す場合は、5〜15分毎に繰り返し投与が必要になります。
普通は1人1本の処方なので、すぐに病院受診または119番通報して搬送が必要だね!
妊娠中のアナフィラキシー患者に対しても、母体の循環動態を守ることにつながるのでアドレナリン筋注の適応。
第3者(一般生活者)でもエピペンを使用できるのか?
エピペンの使用に関して、本人が使用できない場合に代わりに一般生活者でも使用できるのか「厚生労働省」に確認しました。
厚生労働省からの回答
「医療施設外においてアナフィラキシーで生命が危険状態な患者に対し、救命の現場に居合わせた一般生活者がエピペンの使用の教育を受けた、受けていないにかかわらず、エピペンを自ら注射できない患者に代わって緊急性を要すること反復継続性がなく、医師がないことから医師法第17条により禁止されている医師の免許を有しないものによる医業に当たらず医師法違反にならないと考えられる」
厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」
電話で法律の解釈を聞いたため、文献などには明記されていません。
上記のような回答はあったものの、エピペンの使用方法について熟知していなければ危険なためすぐに119番通報しましょう。
エピペンの使用方法
エピペンは、アナフィラキシーの症状が出た時に速やかに使用することが重要です。
アナフィラキシーの主な症状
自覚症状 | 他覚症状 | |
---|---|---|
全身症状 | 不安感、無力感 | 冷汗 |
循環器症状 | 動悸、胸が苦しくなる | 血圧低下、脈拍が弱い、チアノーゼ |
呼吸器症状 | 鼻が詰まる 喉を胸が締め付けられる | くしゃみ、咳発作、呼吸困難 ゼーゼー、ヒューヒューする |
消化器症状 | 嘔気、腹痛、口の中の違和感 便意や尿意をもよおすお腹のゴロゴロ | 嘔吐、下痢、尿失禁 |
粘膜・皮膚症状 | 皮膚の痒み | 皮膚が白または赤くなる 蕁麻疹 口・瞼の腫れ |
神経症状 | 唇の痺れ感、手足の痺れ 耳鳴り、目眩、目の前が暗くなる | 痙攣、意識障害 |
引用:アナフィラキシーガイドライン2022
まずは、エピペンの使用期限、名前を確認します。
エピペンは必ず本人のモノを使用しましょう。
エピペンは、太ももの前外側に垂直(90°)に強く押し付けます。
引用:アナフィラキシーガイドライン2022
その際、衣服の上からでも使用可能。注射後は5秒間そのまま保持。
注射後は、針が出たエピペンを抜き取り、注射した部位を数秒間揉みます。
引用:アナフィラキシーガイドライン2022
エピペンを使用した後は、必ず医療機関を受診し、医師の診察を受けましょう。
引用:アナフィラキシーガイドライン2022
使用済みのエピペンは医師に必ず渡します。
主要参考・引用文献
- 厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」
[https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb2895&dataType=1&pageNo=1],2023年9月9日閲覧 - 日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン2022」
[https://www.jsaweb.jp/uploads/files/Web_AnaGL_2023_0301.pdf],2023年9月9日閲覧 - 第10版 救急救命士標準テキスト「自己注射用アドレナリンの投与」