- 小児救急では見逃してはならない疾患を必ず観察。
- 小児救急で重要なことは、「代表的な疾患の理解」と「生理学的評価」。
- 小児救急の重傷事案の多くは感染に起因する。
小児救急の患者の多くは入院を必要としない軽傷例が多く、重症患者の割合も少ないのが特徴です。
令和2年度の救急搬送人員の年齢割合を見ると小児は全体の約6%でした。
救急搬送は決して多くはありませんが、救急隊ではできる処置が限られているので、適切な観察と病院への情報共有が求められます。
今回は、小児救急で見逃してはいけない疾患についてまとめました。
小児の基本情報については過去記事を参考にしてください→「https://qq-119.com/2445/paramedic-19/
小児救急で見逃してはいけない疾患
- 腸重積
- 腸管軸捻転、中腸管軸捻転
- ヘルニア嵌頓
- 脳炎・脳症
- 可能性髄膜炎・敗血症
- 心筋炎
- 精巣捻転
- 喉頭蓋炎
- 咽後膿瘍
- 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)
- 気道異物
小児のバイタルを測定し、親から情報を聴取します。
その後、総合的に評価し何を疑い観察する必要があります。
しかし、疑っている疾患などに関わらず、確認しなければならない病態があります。
最重症 | 重症 |
---|---|
腸重積 | 急性虫垂炎 |
腸管軸捻転・ 中腸管軸捻転 | 卵巣嚢腫茎捻転 |
ヘルニア嵌頓 | 脳腫瘍 |
脳炎・脳症 | 脳梗塞、 頭蓋内出血 |
化膿性髄膜炎・ 敗血症 | 気胸、 縦隔気腫 |
心筋炎 | 洋血清尿毒症症候群 (脳症) |
精巣捻転 | 薬物中毒 |
喉頭蓋炎 | 児童虐待 |
咽喉膿瘍 | |
糖尿病性ケトアシドーシス (DKA) | |
気道異物 |
腸重積
生後数ヶ月〜3歳までに多く見られ、発生原因や誘因は不明。
特徴的な症状として、回腸末端部が回盲部に捲れ込んで入っていき、血行障害を起こし10〜15分毎の痛みが生じます。

また、イチゴジャム様の血便を呈します。
間欠痛(10〜15分毎)、嘔吐、血便が3徴。

血便の頻度は低いよ!
低年齢児ほど、痛みの影響で顔面が蒼白。不機嫌になったり、機嫌が良くなったりを繰り返したりします。
突然の間欠痛の場合には腸重積を疑いましょう。
腸管軸捻転・中腸管軸捻転

腸軸捻転は腸間膜を軸として腸が捻れる疾患で、腸間膜の主幹動脈の閉塞による虚血に加えて、腸閉塞の病態が加わります。
発生場所はS状結腸が最も多く盲腸と小腸と続き、症状は腹部膨満感、強い腹痛、吐き気、嘔吐などが現れます。

突然、腹部の激痛が出現し、吐き気、嘔吐を伴ったショック状態に陥ることがあるよ!
原因は先天的な要因として、結腸過長症、S状結腸間膜過長症、腸管回転異常などがあり、後天的な要因には、慢性的な便秘、薬物の連用、術後癒着、妊娠、高齢者、精神疾患による薬の服用など挙げられます。
ヘルニア嵌頓

本来あるべき場所から臓器やその一部が脱出した状態。
通常の鼠径部のヘルニアでは、典型的にはしばらく立位をとると鼠径部に膨隆が現れます。

不快感や違和感を伴うことが多いが強い痛みはないよ
膨隆部の皮層に発赤や硬結を認めるときは、ヘルニア内容が壊死に陥っている可能性が高いです。
腹痛を訴える傷病者では必ず鼠径部まで観察し、ヘルニアの有無を確認することが重要。
脳炎・脳症

脳実質の炎症疾患の総称で、感染性脳炎ではウイルス性脳が多く、単純ヘルペス、インフルエンザ、麻疹、ムンプスなど多くのウイルス原因。

中でも、単純ヘルペス脳炎頻度が高く重症。
脳炎と同様の症状はあるが、脳実質に炎症がない場合を脳症といいます。
例として、低酸素脳症、インフルエンザ脳症、ウェルニッケ脳症、糖尿病ケトアシドーシスに伴う脳症など挙げられます。
脳炎は、発熱、頭痛、悪心・嘔吐、髄膜刺激症状などの髄膜炎様症候。
上記に加え、意識障害、痙攣、運動麻痺、失語、精神症状などみられます。
脳症に関しては、原因疾患に応じた症状がみられます。
化膿性髄膜炎・敗血症
髄膜と脳の間には脳脊髄液が存在します。
血液に紛れ込んだ細菌などが髄膜まで運ばれ、そこで増殖し化膿した状態。
髄膜炎では発熱、頭痛、嘔吐、髄膜刺激症状を認めます。
上記症状 + 羞明で発症することが多く、発生時間も「朝から…」など曖昧。

羞明とは普通の人が眩しいと感じない光を眩しく感じることだね!
乳児の場合だと哺乳力が弱かったり、機嫌が悪い、元気がないなどの症状もあります。
小児敗血症は3歳以下に多く、約8割が「肺炎球菌」で残り2割が「インフルエンザ球菌」が原因。
また、生後90日以内で発症した敗血症を「新生児敗血症」と呼び、分娩時の感染に関連して発生します。
小児の敗血症を判断する基準として「LqSOFA」があります。
項目 | 1点 | 0点 |
---|---|---|
CRT | 3秒以上 | 3秒未満 |
意識レベル[AVPU] | VPU(JCSⅡ-10以上) | A(JCSⅠ-3以下) |
心拍数 | 99%ileより上 | 99%ileより以下 |
呼吸数 | 99%ileより上 | 99%ileより以下 |
心拍数と呼吸数の99%lieより上とは、正常な範囲を超えて高いということです。
99%lieとは、ある集団のデータのうち、99%が含まれる範囲の上限値と下限値を示します。
例えば、小児の正常な心拍数の99%lieは、年齢によって異なりますが、新生児では100~180回/分、1歳では80~160回/分、10歳では60~140回/分などとなります。
呼吸数の99%lieも同様に、年齢によって異なりますが、新生児では30~60回/分、1歳では20~40回/分、10歳では12~25回/分などとなります。
したがって、心拍数と呼吸数の99%lieより上というのは、これらの値よりも高いということになります。
心筋炎
小児の心筋炎はウイルス感染での誘因が多く、好発年齢は乳児期及び10歳代半ば。
症状として、発熱、悪寒、全身倦怠感や食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、腹痛などあります。

時間が経過すると、胸痛や動悸、失神、ショックなどの症状も!
身体初見として、頻脈や脈不整、血圧低下、頻呼吸などのバイタルサインの異常に加え、顔色不良、奔馬調律、浮腫、末梢冷感などを呈します。
これらの心不全徴候を見逃さずに次の評価に繋げましょう。
過去ブログにてさらに詳しく解説→「心膜炎・心筋炎の病気について|救急救命士のための基礎知識と心電図」
精巣捻転
精巣捻転は陰嚢内で精索を軸に精巣が回転し、血流が途絶えて放置すると、精巣及び精巣上体の壊死をきたします。
好発年齢が思春期で、症状は下腹部に放散する突然の陰嚢部痛。
陰嚢は発赤、主張して圧痛を認める。
6時間以内であれば整復術で良いが、12時間を過ぎると精巣を摘出する緊急性の高い疾患。
喉頭蓋炎
喉頭蓋炎は細菌感染が原因で生じる喉頭の炎症疾患。
急性喉頭蓋炎は上気道閉塞を引き起こす危険な細菌感染症です。
重症例はインフルエンザ菌によるものが知られています。
症状は、咽頭痛や嚥下痛で発症し、嚥下できないため流涎なども認めます。
また、嗄声や失声、狭窄が進行することで確認できる喘鳴(吸気性呼吸困難)などのもポイント。

起坐呼吸、不穏、頻呼吸、下顎呼吸、尾翼呼吸、チアノーザがあると危険だよ!
浮腫がさらに増大すると陥没呼吸や起坐呼吸も認められるようになります。
小児では発症から症状のピークまでが通常24時間以内と短時間。
咽後膿瘍
咽後膿瘍は,脊椎に隣接する咽頭後部の咽頭後リンパ節に発生。
咽後膿瘍は幼児に最も頻度が高く,咽頭痛,発熱,項部硬直,および吸気性喘鳴を生じます。
また、小児においては急性の上気道感染症が先行。
小児の症状としては、嚥下痛、嚥下困難、発熱、頸部リンパ節腫脹、項部硬直、吸気性喘鳴、呼吸困難。
咽後膿瘍は主に1歳〜8歳まで小児発症。
糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)
1型糖尿病は主に膵島特異的な自己免疫の異常により膵β細胞が破壊され、内因性のインスリン分泌が欠乏または枯渇することにより発症。
1型糖尿病は全年齢で発症しますが、乳幼児では高血糖症状が曖昧でDKAに侵攻し診断されるケースが少なくありません。
活気がない、疲れやすい、夜尿がみられるなど
血糖値上昇(≧250g/dL)に伴い、血漿浸透圧が上昇し、浸透圧利尿による多尿、脱水のため口渇、多飲、悪心、腹痛を訴え、低血圧、頻脈を認めます。
特徴的な所見としては、クスマウル大呼吸が特徴的で、呼気は甘酸っぱいフルーツ用のアセトン臭。
気道異物
気道異物は咽頭・喉頭から気管支までの異物をいいます。
乳幼児に多く、気管分岐部より上での完全閉塞は窒息をきたします。
乳児では特に気管、気管支異物(下気道異物)が多くなります。
上気道異物(完全閉塞)では、呼吸音が聴取できず、激しい努力呼吸、シーソー呼吸、陥没呼吸などの胸郭運動の異常。
小児の場合、発生前に何をしていたかなど重要な情報のため必ず聴取しましょう。
小児救急の対応について
- 代表的な疾患の理解
- 生理学的評価
小児救急で苦慮していることは、年齢が下がるにつれて訴えがない、または訴えが乏しいことにあります。
また、救急救命士の学習内容にも小児の内容は薄く重要視されていません。
小児救急で重要なことは、「代表的な疾患の理解」と「生理学的評価」にあります。

救急要請の多くは、痙攣や発熱などの軽症に思える症状。
しかし、最近やウイルスが原因で重症化し取り返しのつかない結果になる可能性もあります。
小児は代償破綻性ショックからCPAまでの有用が僅かしかありません。
そのため、見落としてはならない疾患や代償性ショックの早期認識が重要になります。
主要参考・引用文献
- 第10版 救急救命士標準テキスト「小児に特有な疾患」,2023年12月1日閲覧
- Modified liverpool quick sequential organ failure assessment for prediction mortality amongst hospitalised patients
[https://www.researchgate.net/publication/372754300_Modified_liverpool_quick_sequential_organ_failure_assessment_for_prediction_mortality_amongst_hospitalised_patients],2023年12月1日閲覧 - 一般社団法人大阪小児科医会「S状結腸軸捻転症」
[https://www.onaka-kenko.com/various-illnesses/large-intestine/large-intestine_13.html],2023年12月5日閲覧