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小児の病院前外傷に関する基礎知識|小児の特徴的な生理学的・解剖学的所見を覚えよう

救急救命士

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記事の結論
  • 小児の観察、処置は成人と同じ。
  • 早期のABCDEの安定化が重要。
  • 小児は低酸素や虚血に脆弱。
  • L&Gを考慮すべき事案は成人と同じ。墜落のみ身長の2〜3倍でL&Gを考慮。

小児交通事故では全身固定の実施率が低く、小児に適した資機材が積載されていないというケースを耳にします。

小児では、ショックからCPAまでの状態異常の進行が早く、早期に救急隊の介入が必要不可欠です。

実際に事案自体も少なく、学ぶ機会も少ないため救急隊の知識、認識不足もあるのではないかと考えています。

今回は病院前小児外傷についてまとめした。

↓過去ブログに小児に関してまとめているのでこちらも参考にしてください!↓

小児の生理学的・解剖学的特徴

小児の生理学的・解剖学的特徴
年齢呼吸数心拍数収縮期血圧
生後3ヶ月未満30〜60/min90〜180bpm生後1ヶ月未満
60mmHg
生後1ヶ月以上、1歳未満
70mmHg
生後3ヶ月以上
6ヶ月未満
30〜60/min80〜160bpm生後1ヶ月以上、1歳未満
70mmHg
生後6ヶ月以上
1歳未満
25〜45/min80〜140bpm生後1ヶ月以上、1歳未満
70mmHg
1歳以上
3歳未満
20〜30/min75〜130bpm1歳以上、10歳未満
70+2×年齢(歳)mmHg
3歳以上
6歳未満
16〜24/min70〜110bpm1歳以上、10歳未満
70+2×年齢(歳)mmHg
6歳以上
10歳未満
14〜20/min60〜90bpm1歳以上、10歳未満
70+2×年齢(歳)mmHg
10歳以上 90mmHg
小児の正常バイタルサイン

生理学的な特徴として、乳児は鼻呼吸が主体。

そのため、出血や分泌物による鼻腔の閉塞は、上気道閉塞の症状を呈します。

また、年少時は体重あたりの二酸化炭素生産が多いため、呼吸数を増やし分時換気量を維持しています。

年少時ほど機能的残気量が少なく、酸素消費量は大きく、低酸素血症に対する呼び機能が低くなっています。

yoshi
yoshi

短時間でも呼吸に異常があると危険だね!

年少時ほど呼吸を腹式呼吸(横隔膜)のため、腹部膨満になることで換気不良に陥ります。

体重あたりの体表面積が大きく、皮下脂肪も薄いため体表から熱を喪失しやすくなっています。

解剖学的な特徴として、相対的に頭部が大きいく、重心も不安定なため転倒・転落による頭部受傷の頻度が高い。

後頭部が突出しているため、仰臥位だと前屈位になってしまいます。

小児 後部部が大きい
yoshi
yoshi

気道確保や仰臥位での全身固定では肩枕などが必要だね!

胸部の肋骨には骨化が不十分で、筋・脂肪などの組織も少ないため胸部の外力は胸腔臓器に直接的に作用します。

肝臓や膵臓の体積は大きいため、腹壁下に存在。そのため、肋骨に保護されていないため腹部の外傷には注意が必要。

小児は絶対的に循環血液量が少ないため、出血性ショックへの移行が早いです。

また、脳血流量と脳酸素消費量が大きいため、低酸素血症や虚血に対し脆弱。

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小児の観察・評価・処置

小児の観察・評価・処置

L&Gを考慮すべき受傷機転は成人と同様になります。

L&Gを考慮すべき受傷機転
  • 同乗者の死亡した車両事故
  • 車外に放出された車両事故
  • 車に轢かれた歩行者、自転車事故
  • 5m以上もしくは30km/h以上の車に跳ね飛ばされた歩行者、自転車事故
  • 運転手が離れていたもしくは30km/h以上のバイク事故
  • 高所からの墜落(6m以上または3階以上を目安)
  • 体幹部が挟まれた
  • 機械器具に巻き込まれた

ただし、高所からの墜落に関しては身長の2〜3倍の高さでL&Gを考慮する必要があります。

気道の評価として、無呼吸、喘ぎ呼吸、吸気性喘鳴、陥没呼吸を認めた場合は気道閉塞を示唆する症状のため下顎呼吸などの処置が必要。

yoshi
yoshi

外傷だから気道確保の第一選択は下顎呼吸だね!

乳幼児の呻吟は肺・胸郭のコンプライアンス低下を示します。

これらは機能的残気量を維持するための代償反応で、呼吸障害の所見の1つです。

A・Bの処置に対して酸素投与を実施しますが、必要があれば早期に補助換気も実施しましょう。

BVM

ショックの判断に関しては成人と同様に観察を実施します。

乳幼児に関しては上腕動脈での触知が必要。

小児の血圧低下はショックの晩期症状ということを把握しましょう。

yoshi
yoshi

循環不全を伴う60bpm未満の徐脈は補助換気を開始し、改善なければCPRだったね!

小児を評価する上で大切な指標が意識レベルになります。

小児の意識レベルの確認方法として、小児GCSの活用と保護者から普段と比べどうか確認するのが有用。

意識レベルの低下、アニソコリア、対光反射の消失、異常肢位は頭蓋内圧亢進の徴候になります。

瞳孔不同
引用:第10版 救急救命士標準テキスト「重症脳障害」

小児は、低酸素や低血糖などから急性期に痙攣を起こしやすいので、ABCDEの安定化を優先しましょう。

小児の全身固定

小児の全身固定

乳児の全身固定で、全身状態が良好であればチャイルドシートに乗せたまま搬送する方法があります。

仮に成人用の外傷固定器具で全身固定する際は、毛布などを活用し隙間を埋め動かないよう工夫が必要になります。

yoshi
yoshi

 バックボードに取り付け可能な小児固定器具などもあるよ!

全身状態が悪い場合、不穏があり固定に苦慮するケースがあります。

その際は、小児抑制器具や毛布を使って暴れないよう抑制、ベルト固定で腕まで巻き込み固定するなど工夫しましょう。

主要参考・引用文献

  • JPTECガイドブック「小児の外傷」
  • 第10版 救急救命士標準テキスト

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