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知らないと後悔する|救急救命士が実施する酸素投与と流量の決定について!

呼吸系
記事の結論
  • 動脈血の酸素化による低酸素血症の治療と予防、動脈血の酸素運搬機能を高め、組織の低酸素状態を改善すること。
  • 酸素療法の適応はPaO2≦60mmHgまたはSaO2≦90%が目安。
  • 吸気時の胸鎖乳突筋、呼気時の腹筋や肋間筋などの呼吸補助筋を使った呼吸を努力呼吸。
  • P/F比を活用し適切な酸素管理ができているか判断。
  • Ⅱ型呼吸不全、慢性的な呼吸器疾患の患者には注意。
  • 過量の酸素投与に注意。
  • 呼吸様式、患者の訴えから酸素投与を判断。

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female paramedic
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SpO2値91%なので、ネーザルカニューラで酸素投与します。

qqyoshi
qqyoshi

ネーザルで酸素投与してもSpO値変化ないよ!リザーバーマスクに切り替えよう!

救急現場でSpO2値の低下、呼吸苦の傷病者に対してどのように酸素流量を決定していますか?

実際に現場で酸素1LでSpO2値の上昇を期待するも変化せず、結局、酸素10L投与に切り替えるなどの経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか?

現場ではショックであれば高流量での酸素投与が推奨されていますが、それ以外の傷病者に対しては何Lの酸素が必要なのか学ぶ機会がありません。

今回は普段学ばない酸素投与について掘り下げてまとめました。

酸素化の目的と病態について

酸素化の目的

酸素化の目的は動脈血の酸素化による低酸素血症の治療と予防、動脈血の酸素運搬機能を高め、組織の低酸素状態を改善することです。

酸素療法の適応はPaO2≦60mmHgまたはSaO2≦90%が目安になります。

1・室内気にてPaO2≦60mmHgまたはSaO2≦90%
・ただし2型呼吸不全で慢性呼吸不全の急性増悪はSpO2≦88%
2・低酸素血症が予想される場合(呼吸困難、頻脈や徐脈、血圧上昇や低下、チアノーゼ、意識障害、発汗など)
3低酸素血症の有無に関わらず、以下の場合。
・酸素運搬機能が低い場合の補助:心不全・貧血
・酸素需要増加による相対的な酸素不足状態:発熱・痙攣
・組織による酸素取り込み効率低下時:敗血症性ショック
・ショックや高度貧血、一酸化炭素中毒など組織の酸素供給が阻害されている場合
酸素療法の適応
qqyoshi
qqyoshi

SpO2じゃなくて、PaO2やSaO2が目安なの?そもそもどんな意味?

酸素投与の指標を図る上でたびたび「SpO2」意外に「PaO2」、「SaO2」、「PaCO2」など目にします。

それぞれの数値の正常値や意味は以下の通りになります。

SpO2:酸素飽和度96〜99%パルスオキシメータで光の吸収値で測定したのがSpO2でSaO2とほぼ同じ数値。
SaO2:動脈血酸素飽和度96〜99%ヘモグロビンの96〜99%に酸素が結合した比率SaO2と呼びます。
PaO2:動脈血酸素分圧90〜100mmHg動脈血中にある酸素の量表しています。
PaCO2:動脈血二酸化炭素分圧35〜45mmHg動脈血中の二酸化炭素の分圧を表しています。
qqyoshi
qqyoshi

SpO2とSaO2の値はほぼ一緒なだね!

救急隊は上記の数値にとらわれず傷病者の訴えや呼吸様式を観察し酸素投与の判断をする必要があります。

qqyoshi
qqyoshi

呼吸補助筋を使用した呼吸は酸素投与の判断に有用だね!

呼吸補助筋は吸気群と呼気群の2つに分けられます。

その中でも、吸気時の胸鎖乳突筋、呼気時の腹筋や肋間筋などの呼吸補助筋を使った呼吸を努力呼吸といいます。

呼吸様式

救急隊が使用する酸素投与器具

酸素投与器具

酸素投与の方法は「低流量システム」と「高流量システム」の2つに分けられます。

両者の違いは酸素流量計の目盛ではなく、患者が必要な酸素流量を超えているかどうかということです。

成人の場合、1回の呼吸で500mlを吸います。吸気時間を1秒とすると、1秒間に500mlをいつもでも吸えるようにするには、500ml×60秒=30,000ml、つまり30L/分が必要。

引用:

結論として、30L/分以上の酸素投与が可能なシステムを高流量システム30L/分以下のものを低流量システムといいます。

救急隊が普段使用しているマスクなどで5L/分投与すると、5Lは純酸素、残りの25Lは周りの空気を吸い込んでいるという事です。

また、低流量システムは患者の呼吸様式によって酸素濃度が変化するため、呼吸様式によっては効果が期待できない場合があります。

酸素投与器具
qqyoahi
qqyoahi

じゃ、高流量システムはどんな器具なの?

高流量システムとは、患者の呼吸様式関わらず安定した酸素吸入濃度を維持できます。

酸素投与器具

低流量システムの特徴

前述した通り、低流量システムの特徴として、患者の呼吸様式により吸入酸素濃度が左右されるということです。

例えば、口呼吸の患者にネーザルカニュラ(鼻カニュラ)を使用しても、口呼吸なので効果が期待できません。

さらに、呼吸数の速い患者、1回換気量の多い患者だと適切な器具、流量で実施しなければ目安とする酸素濃度より低くなります。

また、マスクで酸素投与下にマスク内が曇っていると流量不足と判断できます。

高流量システムの特徴

高流量システムは酸素の供給料が30L/分以上で、患者の呼吸様式に関わらず安定した吸入酸素濃度を維持できます。

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酸素流量はどうやって決める?

酸素流量の決め方

酸素投与が正常に実施できているか確認するには、「SpO2と酸素解離曲線」、酸素化能の指標「P/F比」について理解する必要があります。

SpO2値の正常値は95〜99%。

SO2とPO2の関係性は以下の図のようにっています。

SpO2値が90%の時、PO2は60mmHgとなり、それ以下になると急激に曲線が下降。

酸素解離曲線
qqyoshi
qqyoshi

酸素解離曲線からPO2の値を予測できるね!

SO2(%)PO2(mmHg)ポイント
9897健常者動脈血
9580老年健常者静脈血
9060呼吸不全の定義
8855在宅酸素適応基準
7540正常静脈血
5027P50
3520耐えうる最低点
female paramedic
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SpO2値は高ければ高いほ良いんじゃないの?常に100%目指すべき?

qqyoshi
qqyoshi

SpO2値が100%というところに罠が隠れてるんだよ!

SpO2-100%ということは、SO2値は100mmHg以上ということになります。

つまり、SO2値が200mmHgなのか150mmHgなのか判断できません。

過量の酸素投与には「活性酸素の増加による細胞障害」、「吸収性無気肺」「換気応答の低下(CO2ナルコーシス)」、「血管収縮による臓器血流の減少」など有害事象が報告されており“酸素毒性”と呼ばれます。

male paramedic
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Ⅱ型呼吸不全、慢性的な呼吸器疾患の患者には注意が必要だね!

酸素投与が正常にできているか判断するにはP/F比を求める必要があります。

P/F比の求め方

酸素分圧(PaO2)÷ 吸入酸素濃度(FⅠO2)= P/F比(oxygen index:酸素化係数)

P/F比の正常値は400以上になります。

酸素流量(L/分)FⅠO2
鼻カニュラ10.24
20.28
30.32
40.36
酸素マスク50.4
60.5
70.6
リザーバーマスク70.7
80.8
90.8以上
100.8以上
酸素流量と吸入酸素濃度の目安

つまり、リザーバーマスクで10L/分酸素投でSpO2-95%だと、P/F比は100になるので呼吸状態が良くないと判断できます。

qqyoshi
qqyoshi

重症患者でPaO2-100mmHg(SpO2-100%)以上にならないのは異常なんだね!

救急救命士が実施する酸素投与はP/F比を活用して適切かの判断、呼吸状態や訴えから総合的に判断する必要があります。

酸素解離曲線

曲線を見ても分かるとおり、SO2が90%以下になると曲線は急降下します。

救急救命士は90%になったら酸素投与ではなく、その手前で酸素投与し備えるべきでしょう。

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