現場で傷病者を観察し呼吸苦があった場合の観察および判断についてまとめています。
呼吸の聴診について苦手意識が強い救急救命士も多いのではないでしょうか?
異常呼吸音について聴診する機会が少ないことと、知識が曖昧で自信がないことが原因ではないでしょうか?
異常呼吸音についての知識は重要ですが、まずは正常な呼吸かどうかを見極めることが重要です。
現場では「正常」か「それ以外か」の判断でも最悪大丈夫です。
今回は正常な呼吸と異常呼吸音についてまとめました。
これを機に呼吸に関しての苦手意識を克服しましょう。
正常な呼吸回数と呼吸のリズム
呼吸状態の異常をいち早く発見するには、SpO2値などのモニター観察ではなく、救急救命士が実際に見て判断するのが重要です。
そのためには、正常な呼吸を知り観察する必要があります。
正常な呼吸とは吸気に比べて呼気が長く、呼吸回数は14〜20回/分。
女性は男性に比べやや多く、呼吸数は年齢とともに減少するんだったね!
呼吸の流れとして、「①吸う」、「②溜める」、「③吐く」、「④休止」となります。
頻呼吸は休止期が短縮して呼吸筋疲労を招くよ!
次に異常な呼吸パターンになります。
脳の障害や特定の疾患があると、特徴的な呼吸様式を取る場合があります。
呼吸数だけでなく、パターンや胸郭の動きも観察することで病態を予想し適切な処置に繋げることができます。
引用:第10版 救急救命士標準テキスト
異常呼吸音の鑑別と評価
異常呼吸音かどうか判断するためには、正常呼吸音を知らなければなりません。
「正常な呼吸回数と呼吸のリズム」で説明した通り、正常な呼吸の成分は吸気と呼気、休止期の3つ。
呼吸音Youtube
正常な呼吸を聞き慣れて、異常呼吸音を聞いた時に違和感を覚えるようにしよう!
異常呼吸の発生源を「気管音」、「気管支音」、「肺胞音」の3つに分け確認しましょう。
「気管音」の聴取の性状として、吸気性喘鳴、高調整連続音(ストライダー)があります。
原因として窒息、急性喉頭蓋炎など。
ストライダーは吸気に聴取できる喘鳴のことだね!
「気管支音」の性状として、ウィーズやロンカイがあります。
原因として、気管支喘息、気管内異物、COPDなどで、ロンカイであれば気道内分泌物を示唆し、ウィーズであれば気道狭窄を疑います。
低音性(ロンカイ)、いびき音は「ぐーぐー」もしくは「ブーブー」のように聞こえるよ!
高音性(ウィーズ)は「ピーピー」もしくは「ヒューヒュー」のように聞こえるね!
「肺胞音」の性状として、コースクラックルック、ファインクラックルがあります。
原因として、間質性肺炎、肺気腫、心不全、細菌性肺炎など。
ファインクラックルは閉塞した末梢気管支が再開通した際に発生。
ファインクラックルは「パチパチ」と細かく音の数が多いよ!
コースクラックルは気道内分泌物の振動で粗く散発的な音が聞こえます。
コースクラックルは「ポコポコ」や「ブツブツ」のように聴こえるね!
聴診部位における聴診音の性状と疾患をまとめた図が下になります。
引用:第10版 救急救命士標準テキスト
現場での緊急度・重症度の判断
呼吸系の最も注意すべき点は、「発声」が可能かどうかです。
発声ができず上気道閉塞に伴う窒息が疑われる場合は緊急度がきわめて高いです。
次に、生理学的所見、バイタルサインを確認しましょう。
起坐呼吸、口すぼめ呼吸、努力呼吸、鼻翼呼吸などの呼吸様式を認めないかチェック。
緊急度の高いバイタルサイン以下の通りです。
- 意識:JCSⅢ−100以上
- 呼吸数10/分未満または30/分以上
- 呼吸音の左右差および異常呼吸
- 脈拍120/分以上または50/分未満
- 収縮期血圧90mmHg未満または200mmHg以上
- SpO2値が90%未満
- ショック症状など
呼吸困難が強い時はSpO2値に関わらず酸素投与は必須だよ!
また、上記を認めなくても著名な喘鳴、胸痛、喀血(概ね100mL以上)、著名な浮腫、広範囲な断続性ラ音・連続性ラ音がある場合は呼吸系疾患として緊急度が高いことを示します。