救急活動の中で「Harry, bat gently!」という言葉を聞いたことがありますか?
“Harry, bat gently”とは“緊急安静搬送”という意味になります。
私が救急隊について間もない頃、「搬送は急ぎで!でもあまり揺らさないで!」と言ったところ、「どっちかにして」と返答がありました。
“緊急安静搬送”の考え方は現場ではとても重要であるにも関わらず、その考え方や疾患があまり浸透していないように感じます。
今回は、“Harry, bat gently”の考え方と対応が必要な疾患について解説します。
“Harry, bat gently”とは?
- “Harry, bat gently!”は緊急安静搬送。
“Harry, bat gently”とは“緊急安静搬送”という意味です。
内因性L&Gには該当しないが、現場または搬送中に傷病者が急変しやすい状態のため、不要な刺激はできるだけ避け急ぎつつも安静に適切な病院に搬送しましょうという考え方です。
ここでのポイントは“緊急”であり“安静”に搬送が必要ということだね!
“Harry, bat gently”に該当する疾患
- 内因性L&Gではないが、急変が予想される。
“Harry, bat gently”に該当する疾患の表になります。中でも“大動脈解離(瘤)”、“くも膜下出血”、“偶発性低体温症”は緊急安静搬送の該当疾患として有名です。
大動脈解離(瘤)、くも膜下出血では血圧の上昇をさせないように、移動や搬送は慎重に行います。
大動脈瘤は、腹部の緊張を除くように膝を屈曲した姿勢が推奨されているよ!
脳浮腫や血腫などによって押し出された脳の一部が脳幹を圧迫することを“脳ヘルニア”と言います。
脳ヘルニアは最終的に呼吸中枢の障害をきたすので、症状を疑ったら搬送を急げきましょう。
偶発性低体温症では、高度徐脈や心房細動、心室性不整脈が生じやすくなっています。
偶発性低体温症の傷病者の心臓は易刺激性が高くなっています。致死性不整脈を生じやすいので体位変換や気道管理は愛護てきに行う必要がります。
救急隊の活動
- 刺激により、CPA・ショックに移行する病態がある。
- 搬送方法、傷病者管理には注意が必要。
救急隊の接触時、一見するとバイタルサインに異常が生じていいなくても、急変することがあります。
そのため、救急隊は常に“CPA”や“ショック”、“意識レベルの低下”などに備えておく必要があります。
特に、“大動脈解離(瘤)”、“くも膜下出血”、“偶発性低体温症”については刺激により、再解離(破裂)、再出血、心室細動(VF)など重篤な症状に移行します。
緊急安静搬送を実現させるためには、機関員の腕にかかっています。
搬送中は急なアクセル、ブレーキをしないよう心掛け、舗装されて道を運転するようにしましょう。
悪路に関しては、スピードを落とし刺激を避けるよう努力しましょう。