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脳梗塞患者の治療までの時間を短縮するために救急隊できること!脳梗塞の病態把握!

ブログタイトル 救急救命士
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この記事の結論!
  • 脳梗塞とは、脳血管の狭窄や閉塞によって脳血流量が不足し脳虚血を起こす状態。
  • rt-PA療法は発症後4.5時間以内の虚血性脳血管障害患者が適応。
  • 脳卒中疑いの観察として「CPSS + ELVOスクリーン + アニソコ」を推奨。
  • 最終健在時刻または最終未発症時刻の聴取は必須。
  • ①顔の歪み、②上肢挙上の左右差、③構音障害の3点で評価。1つでも当てはまれば脳卒中の可能性が72%。

救急現場でよく遭遇する脳梗塞疑い。

rt-PAまでが4.5時間以内、脳血栓回収療法が6時間以内で治療が開始されるまでに検査で時間がかかります。

救急隊の適切な観察,情報聴取により治療までの時間を短縮することができます。

今回は患者の根本的治療までの時間を縮めるために、脳梗塞の病態と救急隊の観察内容についてまとめました。

脳梗塞の病態

  • 内頸動脈系の閉塞→片麻痺や半身の知覚障害、共同偏視。
  • 障害が優位半球→失語 非優位半球→半側空間無視、失行。
  • 椎骨脳底動脈系の閉塞→めまい、悪心、嘔吐、脱力、痺れ、小脳失調。
  • 脳幹梗塞や広範囲な大脳皮質の梗塞→急激な意識レベルの低下。

脳梗塞とは、脳血管の狭窄や閉塞によって脳血流量が不足し脳虚血を起こす状態。

脂質異常や糖尿病などの基礎疾患患者が増えアテローム血栓性脳梗塞が増えています。

qq-yoshi
qq-yoshi

高齢化に伴い心房細動を基礎疾患にもつ患者も増え心原性脳塞栓も増加してるね!

症状は閉塞する血管により異なり、内頸動脈系の閉塞では片麻痺や半身の知覚障害、共同偏視などがみられます。

障害が優位半球の場合は失語、非優位半球の場合は半側空間無視、失行などの症状を伴うことがあります。

※ 失行とは、パターンや順序を覚える必要がある作業を行う能力が失われる障害。

椎骨脳底動脈系の閉塞では、めまい、悪心、嘔吐、脱力、痺れ、小脳失調などの症状。

急激な意識レベルの低下は脳幹梗塞や広範囲な大脳皮質の梗塞で見られる。

脳梗塞の部位別症状
脳梗塞の部位別症状

rt-PA(アルテプラーゼ)

rt-PA(アルテプラーゼ)は静注用の血栓溶解薬で、発症後4.5時間以内の虚血性脳血管障害患者が適応となります。

rt-PA(アルプテラーゼ)は、血栓を強力に溶かして症状を改善させる効果が高い反面、合併症として出血を引き起こすリスクもあります。

静注血栓溶解療法
静注血栓溶解療法
出典:日本脳卒中学会 脳卒中医療向上・社会保健委員会/rt–PA(アルプテラーゼ)静注療法適正治療指針 第三版

来院から治療開始まで様々な検査を実施する必要があり、発症から3.5時間以内に治療可能な病院への到着が必要になります。

脳血栓回収療法

脳血栓回収療法は、rt-PA療法が適応外であったり投与後も改善が認められない場合に実施されます。

脳卒中を発症して8時間以内に血栓を回収し脳血流を再開させる治療になります。

治療までの時間短縮するための救急隊の活動

  • 脳卒中疑いの観察として「CPSS + ELVOスクリーン + アニソコ」を推奨。
  • 情報聴取は年齢、性別、MIST、最終健在時刻または最終未発症時刻の確認。
  • CPSSで1項目でも該当すると感度は72%。

脳卒中を疑う傷病者に対して、車内収容前に「不整脈」「共同偏視」「半側空間無視」「失語」「顔面麻痺」「上肢の麻痺」を確認しましょう。

上記を観察する方法として当ブログでは、「CPSS + ELVOスクリーン + アニソコ」の観察を推奨してます。

qq-yoshi
qq-yoshi

アニソコは「anisocoriaアニソコリア」の略で瞳孔不同って意味だよ!

ELVOスクリーンは、血管内治療が有効な治療法である主幹動脈閉塞を有する急性期脳梗塞患者を検出するために、救急隊員が簡単で、素早く、効果的に用いることができる病院前スケール。

観察中に突然の激しい頭痛(くも膜下出血疑い)、胸背部痛(大動脈解離疑い)での発症の場合は評価を中断し安静かつ速やかに適切病院へ搬送しましょう。

年齢、性別、MISTに沿った情報聴取をし、「最終健在時刻」「最終未発症時刻」の確認をします。

意識障害があり、くも膜下出血の可能性が低い場合は血糖測定の実施も考慮。

低血糖での意識障害でないことを否定するため。

発症時刻とは、患者自身、あるいは症状出現時に目撃した人が報告した時刻。こうした情報が取れない場合は無症状であることが最後に確認できた時刻(最終未発症時刻)。

rt-PA療法チェックリスト
rt-PA療法チェックリスト
出典:秋田県公式サイト/脳卒中病院前救護プロトコル

搬送途上に余裕があれば、上記情報も聴取することで患者の治療までの時間を短縮することに繋げられる可能性があります。

シンシナティ病院前脳卒中スケール(CPSS)

シンシナティ脳卒中スケール(CPSS)は評価が簡単でかつ感度が高い評価方法になります。

①顔の歪み、②上肢挙上の左右差、③構音障害の3点で評価し、1つでも当てはまれば脳卒中の可能性が72%となります。

シンシナティ脳卒中スケール:CPSS
シンシナティ脳卒中スケール:CPSS
出典:厚生労働省/観察の基準/脳卒中病院前救護ガイドライン

主要参考・引用文献

  1. 第9版 救急救命士標準テキスト
  2. 厚生労働省/観察の基準「脳卒中病院前救護ガイドライン」
    [https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/10/dl/s1016-10b_0007.pdf],2023年6月20日閲覧
  3. 秋田県公式サイト「脳卒中病院前プロトコル」
    [https://www.pref.akita.lg.jp/uploads/public/archive_0000027754_00/10_脳卒中病院前救護プロトコル(H2512ver).pdf],2023年6月20日閲覧
  4. 出典:日本脳卒中学会 脳卒中医療向上・社会保健委員会「rt–PA(アルプテラーゼ)静注療法適正治療指針 第三版」
    [https://www.jsts.gr.jp/img/rt-PA03.pdf],2023年6月20日閲覧
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