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救急現場で測定する血圧の重要性と測定部位について!救急隊に必要な基礎知識!

救急救命士
この記事の結論!
  • 血圧の正常値は収縮期が100〜130mmHg、拡張期が50〜80mmHg。
  • 収縮期血圧が90/–mmHg以下,普段の収縮期血圧が150/–mmHg以上で60mmHg下がればショック状態。
  • 左心室壁の冠動脈には“拡張期”に血液が流れる。
  • 平均血圧は65mmHg以下だと臓器灌流が乏しいと判断。
  • ショックの定義:収縮期血圧<90mmHgまたは平均血圧<65mmHgで,末梢循環不全(意識障害,尿量減少など)を伴うもの。

普段の救急現場で血圧測定を実施していると思います。

血圧が高ければ高血圧でそれに沿った疾患を疑い,低ければショックという認識ではないですか?

改めて学んでみると、収縮期血圧,拡張期血圧,平均血圧などで傷病者の状態を深く知ることができます。

今回は医療の基礎知識である“血圧”についてまとめた記事になります。

血圧

  • 血圧の正常値は収縮期が100〜130mmHg、拡張期が50〜80mmHg。
  • 女性は男性と比べて5〜10mmHg低い。
  • 血圧低下の原因には「循環血液量減少性ショック」「心収縮力の低下」「心外閉塞・拘束性」「末梢血管抵抗の減少」がある。

血圧の正常値は成人で収取期血圧が100〜130mmHg。拡張期血圧が50〜80mmHg。

女性は男性と比べて5〜10mmHgほど低いと言われていますが、救急現場では90/–mmHg前後の人もよく見かけます。

急激な血圧上昇は中枢神経系や準関系に異常をきたし、高血圧、くも膜下出血、急性大動脈解離などの症状を起こす可能性があります。

血圧低下の原因として、「循環血液量減少性ショック」「心収縮力の低下」「心外閉塞・拘束性」「末梢血管抵抗の減少」が挙げられます。

収縮期血圧(SBP:systolic blood pressure)

収縮期血圧とは心臓収縮後にかかる後負荷を意味しています。

収縮期血圧の説明

人体は生命の危機の陥るとそのストレスからカテコラミンが放出されます(カテコラミンリリース)。

血圧はカテコラミンの影響を受けるバイタルサインの1つです。

血圧を評価するポイントとして,“カテコラミンリリース”での病態かショックかを判断します。

カテコラミンリリースが考えられる代表的な病態。

  • 呼吸不全
  • 心不全・循環不全
  • 低血糖
  • 発熱(敗血症含む)
  • 疼痛・不安・運動後

収縮期血圧はショックの指標としての理解が多く,90/–mmHg以下または普段の収縮期血圧が150/–mmHg以上だと,そこから60mmHg下がればショックという認識

ショックの初期では,心拍数及び末梢血管抵抗を上げ血圧を保とうとする代償機能が働きます。

つまり,ショックの初期では明らかな血圧低下を認めないので注意が必要です。

拡張期血圧(DBP:diastolic blood pressure)

血液を送り出した後,心臓は拡張して全身から戻ってきた血液を溜め込みます。

血管には全身に血液を十分に送り出すため,一定の圧力がかかっています。その最小の圧力を拡張期血圧と言います。

拡張期血圧の説明

また,拡張期血圧は冠動脈灌流圧を意味していて,心臓に筋肉に十分に血液が流れているのかがわかります。

つまり,心臓に栄養血管である冠動脈に血液が流れているか判断できます。

冠動脈は大動脈弁から左に1本,右に1本でており合計3本あります。

冠動脈
引用:救急救命士標準テキスト

心臓の収縮期は大動脈弁が開き血液を送り出し,拡張期に大動脈弁が閉じ冠動脈に血液が流れます。

※大動脈弁の上から冠動脈が伸びているため。また左冠動脈は拡張期優位とも言われています。

左心室の栄養血管である冠動脈は収縮期に心室内圧が上昇すると心室内圧が血管内圧より高いため圧迫。

そのため,左心室壁への血液は収縮期には少なく“拡張期”に多く流れます。

つまり拡張期血圧がある程度高くないと冠動脈に血液が流れなくなるということです。

右心室壁の冠動脈は右心室内圧が低いため“収縮期”に血液が流れます。

拡張期が低いときに考えられる疾患として,大動脈弁狭窄症,大動脈弁閉鎖不全など挙げられ,心電図上では虚血状態なのでST低下などの見られます。

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狭心症でもST低下があるね!

平均血圧

平均血圧を見ることで心筋以外の血液の流れ具合がわかります。

平均血圧は65mmHg以下だと臓器灌流が乏しいと判断できます。

しかし,脳は別で血液脳関門があるため平均動脈圧が50mmHgまでは血液が流れる仕組みになります。

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qq-yoshi

一般的に平均動脈圧が50〜150mmHgで一定に保たれるよ!

ショックの定義にも,収縮期血圧<90mmHgまたは平均血圧<65mmHgで,末梢循環不全(意識障害,尿量減少など)を伴うものとされています。

救急隊の活動で平均血圧<65mmHg+尿量減少などの症状を認めれば,ショック状態または今後ショックになると考え行動しなければなりません。

血圧の測定方法と下肢での測定

  • 下肢の血圧は一般的に上肢の血圧より+10〜20mmHg。
  • 測定時は心臓と同じ高さにする。
  • 下肢で血圧測定する理由は,下行大動脈解離の時に上肢と下肢の血圧の差が上肢>下肢になるため。

血圧の測定方法には次の2点があります。

  • 聴診方
  • 触診方

傷病者の状態を把握するためには,正しい測定方法と測定場所を知る必要があります。

聴診方

聴診法による血圧測定の方法は以下になります。

  1. マンシェットは上腕長の2/3程度の幅の物を使用。
  2. 傷病者の測定部位の上腕を心臓の高さに。
  3. 上腕動脈の位置を触診で確認。
  4. マンシェットの巻きつける強さは,腕とマンシェットの間に指が1〜2本入る程度。
  5. 肘窩部位で、上腕動脈に聴診器を当てます。
  6. 傷病者の普段の収縮期血圧より+30mmHgまで加圧。
  7. コロトコフ音の聞こえ始めを収縮期,消失した場所を拡張期血圧と判断します。

触診法

触診法による血圧測定は以下になります。

  1. 聴診法の1〜4までは同じ(3は省略)。
  2. 傷病者の橈骨動脈の拍動を感じながら加圧。
  3. 拍動がなくなったところから+30mmHg加圧。
  4. 徐々に減圧し最初に拍動を感じたところを収縮期血圧。
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触診法では拡張期血圧の測定はできないね!

下肢での血圧測定

血圧測定は上肢以外で下肢でも測定することができます。

下肢で測定する場所は、①大腿部にマンシェットを巻き膝窩動脈で測定する方法,②下腿にマンシェットを巻いて,後脛骨筋動脈または足背で測定する方法があります。

下肢での血圧測定部位
下肢での血圧測定部位

下肢の血圧は一般的に上肢の血圧より+10〜20mmHg。

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測定のポイントは心臓と同じ高さにすること!つまり“仰臥位”。

下肢で血圧測定する理由は,下行大動脈解離の特徴として上肢と下肢の血圧の差が上肢>下肢になるため。

また,単純に腕で測定できなかったり,麻痺や拘縮があり血流量が乏しかったりすると正確とは言えないのでこのような場合に下肢で測定します。

主要参考・引用文献

  1. 第10版 救急救命士標準テキスト
  2. 東京薬科大学「シミュレーターを使った質の高い臨床教育を」
    [https://www.toyaku.ac.jp/pharmacy/newstopics/pdf/272a9d246c65d297c4ac29ed6333ac374e3b16f4.pdf],2023年6月22日閲覧
  3. おきなわクリニカルシミュレーションセンター「Clinical Physiology of Vital Signs バイタルサインの生理学的解釈法」
    [http://okinawa-clinical-sim.org/assets/files/SIMAHAMA%20Clinical%20Physiology%20og%20Vital%20Signs%20Text%20PDF.pdf],2023年6月22日閲覧
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