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救急救命士が知っておくべき意識障害の評価と対応|意識障害の鑑別方法を解説

意識障害
この記事の結論!
  • 意識障害には脳自体の障害、血流や代謝異常に原因がある。
  • 意識障害の評価はJCSでスクリーニングしGCSで詳細な評価を推奨。
  • 現場で血糖測定することで意識障害の判別や搬送先の選定など傷病者の利益に繋がる。

近年、PCECなどの意識障害に対する救急隊のアプローチなどをまとめた本をよく見かけます。

内因性の病態に多い意識障害に焦点を当てており「防ぎ得た後遺症あるいは死亡の回避」を目的としています。

実際に意識障害のある傷病者に対応する時、適切な観察と評価をすることで目的を達成することができると思います。

今回は意識障害に対する共通の認識と評価で活動できるようまとめました。

意識障害とは何か?

意識障害とは?
  • 覚醒」「認知」「返答」の3つが低下した状態を意識障害。
  • 意識障害には脳自体の障害、血流や代謝異常に原因がある。

意識障害とは意識が清明でない状態を指します。

意識清明とは、覚醒しており、自身と周囲を認識(認知)し、それを他人にわかるよう説明(返答)できる状態。

意識障害は上記の機能が低下したため起こります。

意識障害の原因として「一次性脳病変」「二次性脳病変」の2つに大別。

一次性脳病変の原因として、脳血管障害や頭部外傷など脳に直接原因があります

一次性脳病変
引用:第9版 救急救命士標準テキスト

二次性脳病変の原因として、低血糖や低酸素血症、血圧低下、中毒など脳に原因がない病変。

意識障害の原因を解決することで意識レベルは回復します。

しかし、低血糖や低酸素血症が長時間放置されると、脳に深刻なダメージを与え意識障害が継続する場合があります。

二次性脳病変
引用:第9版 救急救命士標準テキスト
qqyoshi
qqyoshi

意識障害には脳自体の障害、血流や代謝異常に原因があるってことだね!

意識障害が脳にあるのか、脳以外なのか検索に必要な表は下記になります。

一次性脳病変と二次性脳病変による意識障害の違い
一次性脳病変と二次性脳病変による意識障害の違い
引用:第9版 救急救命士標準テキスト

意識障害の評価方法

意識障害の評価方法
  • JCSでスクリーニングし、GCSで詳細な評価を推奨。
  • JCSは日本でよく使用されている評価方法。
  • JCSの評価簡便で、意識障害の評価に適している。
  • GCSは意識内容や神経学的初見を評価するのに適している。

意識障害の評価方法には「JCS」と「GCS」があります。

JCSは日本で広く使われており、意識レベルを4段階で評価。

ジャパンコーマスケール(JCS)
引用:第9版 救急救命士標準テキスト

失語症や気管切開などで応答ができない場合には「3」と判断。

GCSは、国際的に使用されており、開眼・言葉・運動の3つの項目で評価します。

グラスゴーコーマスケール(GCS)
引用:第9版 救急救命士標準テキスト

挿管などで発声ができない場合は「T」と表記し、扱いは1点と同等。

JCSの評価は簡便で、意識障害の評価に適していますが、意識内容や神経学的所見を評価するには不十分です。

GCSは、意識内容や神経学的初見を評価することはできますが、意識レベルの微妙な変化を捉えるには不十分です。

qqyoshi
qqyoshi

JCSとGCSはそれぞれの特徴に応じて使い分けけることが重要だね!

一般的にはJCSでスクリーニングし、GCSで詳細な評価をすることが推奨されています。

意識障害 原因検索のためのキーワード

原因検索のキーワード
  • AIUEOTIPS
  • 意識に障害 なるほどまずい 試して酸素

意識障害の原因を鑑別する基本項目「AIUEOTIPS」。

  • A:急性アルコール中毒、ウェルニッケ脳症、大動脈解離
  • I:低血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、非ケトン性高浸透圧症候群
  • U:尿毒症
  • E:脳症(肝性・高血圧性)、内分泌疾患(甲状腺機能亢進症/低下症、副甲状腺機能亢進症、急性副腎不全)、電解質(Na・K・Mg・Ca)異常
  • O:低酸素血症・CO2ナルコーシス・薬物中毒
  • T:外傷・体温異常(低体温・高体温)
  • I:感染症(髄膜炎・脳炎・脳腫瘍・敗血症・肺炎)
  • P:精神疾患、ポルフィリア
  • S:てんかん、ショック、脳卒中、くも膜下出血、ビタミン欠乏

上記をは英語のため覚えづらいため「意識に障害 なるほどまずい 試して酸素」をおすすめします。

  • :インスリン → 低血糖・高血糖
  • :ショック
  • :飢餓 → 低栄養
  • :尿毒症 → 腎疾患
  • しょう:消化器疾患 → 肝疾患
  • :外傷
  • :飲酒 → アルコール関連
  • なる:ナルコーシス
  • :ホルモン → 甲状腺・副腎疾患など
  • :瞳孔不同 → 脳ヘルニア
  • :麻薬ほか → 薬物・毒物中毒
  • ずい:髄膜炎 → 髄膜炎・脳炎
  • :体温異常 → 熱中症・偶発性低体温症
  • :メンタル → 精神疾患
  • :失神
  • :てんかん・痙攣
  • さん:酸素 → 低酸素血症
  • :卒中 → 脳卒中

救急隊の活動と対応

救急隊の活動!
  • 意識障害を確認した場合には現場で血糖測定を考慮。
  • 早期に測定することで意識障害の判別や搬送先の選定など傷病者の利益に繋がる。

普段の救急と同じく、ABC(気道・呼吸・循環)の確認を行います。

ABに異常があれば、気道確保やBVM換気、酸素投与など行います。

循環の評価には脈拍数やリズム、脈圧、血圧などを測定。

心電図モニターを装着し、冠動脈疾患や致死的不整脈の有無を確認します。ショックの場合は心停止前輸液を考慮しましょう。

意識障害を確認した場合には現場で血糖測定を考慮しましょう。

くも膜下出血を早期に否定し測定することで、意識障害の判別や搬送先の選定など傷病者の利益に繋がります。

意識障害の判別で特に重要な項目は「情報聴取」になります。

意識障害の原因の判別の判断において、60〜70%は病歴聴取の正否で決まるともいわれています。

また、周囲の状況から判断できる意識障害がることも念頭に置き活動しましょう。

qqyoshi
qqyoshi

傷病者の接触前から観察は始まってるよ!(室内の環境や薬の空箱がないかの確認)

主要参考・引用文献

  1. 第9版 救急救命士標準テキスト
  2. J-STAGE「福山・府中圏域(広島県)における PCEC コース開催の取り組みと現状」
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsem/21/5/21_643/_pdf/-char/ja
    ,2023年8月20日閲覧
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