最近、若者の間で「OD」が流行しているね!
「OD」って聞き慣れないけど、どういう意味?
「OD」とはオーバードーズ(Overdose)の略で、常容量を超えた大量の服薬を意味します。
オーバードーズは、医師の処方箋がなくても購入できる市販薬や、医師から処方された向精神薬などを過剰に摂取することで起こり得ます。
一時的に快感や現実逃避を得ることができますが、その代償として、急性毒性や依存症、死亡などの重大なリスクを伴います。
日本だけでなく世界的にも増加傾向にあり、特に若者の間で社会問題化。
この記事では、オーバードーズの原因や症状、予防や対処法などについて詳しく解説します。
オーバードーズ(OD)の原因
意図的な過剰摂取とは、自殺企図や快感を得るために、故意に大量の薬物や医薬品を摂取することです。
欲求不満やプレッシャーから現実逃避しようとする心理。
非意図的な過剰摂取とは、誤って多く飲んでしまったり、他の薬物やアルコールと併用したりして、知らず知らずのうちに過剰摂取することです。
原因としては用法・用量を守らなかったり、医師や薬剤師の指導を無視したりすることだね。
事故的な過剰摂取とは、医療現場で使用されるときに患者に誤って過量の薬を投与してしまったり、子どもが誤って薬を飲んでしまったりすることです。
原因としては、管理不十分や注意不足が挙げられます。
オーバードーズ(OD)の症状
オーバードーズの症状は、摂取した薬物や医薬品の種類や量によって異なりますが、一般的に以下のようなものがあります。
オーバードーズは、薬物の種類や量、個人の体質や状況によって、さまざまな身体的・精神的な影響を及ぼします。
オーバードーズの症状には、意識障害、呼吸困難、心臓停止、幻覚、錯乱、うつ状態など多岐に渡ります。
厚生労働省は、下記の成分を含む一般医薬品を「濫用等の恐れがある医薬品」として定めています。
- エフェドリン
- コデイン(鎮咳去痰薬に限る)
- ジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る)
- プソイドエフェドリン
- メチルエフェドリン(鎮咳去痰薬のうち、内用液剤に限る)
- ブロムワレリエル尿素
エフェドリン
エフェドリンは、アドレナリンに似た作用を持つ成分で、気管支喘息や鼻づまりなどに効果があります。
しかし、過量摂取や乱用すると、不整脈や高血圧などの重篤な副作用や依存症を引き起こすおそれがあります。
コデイン・ジヒドロコデイン
コデインとジヒドロコデインは、オピオイド系の成分で、咳止めや痛み止めとして用いられます。
これらの成分は中枢神経を抑制して眠気や鎮静をもたらすため、乱用すると呼吸抑制や依存症を引き起こすおそれがあります。
プソイドエフェドリン
プソイドエフェドリンは、エフェドリンに似た作用を持つ成分で、鼻づまりやアレルギー性鼻炎などに効果があります。
過量摂取や乱用すると、不整脈や高血圧などの重篤な副作用や依存症を引き起こすおそれがあります。
メチルエフェドリン
メチルエフェドリンは、エフェドリンに似た作用を持つ成分で、気管支喘息や鼻づまりなどに効果があります。
過量摂取や乱用すると、不整脈や高血圧などの重篤な副作用や依存症を引き起こすおそれがあります。
アセトアミノフェン(解熱・鎮痛剤)
近年、若者の間で流行しているODの種類として、アセトアミノフェンを含む解熱・鎮痛剤があります。
アセトアミノフェンを含む薬剤として「カロナール」や「アンヒバ」などがあるね!
カロナールは師匠かぶの体温調節中枢に作用して皮膚の血管を拡張させます。
内服による急性中毒では、初期症状として悪心・嘔吐、下痢。
1〜3日で強い右上腹部痛及び黄疸、ビリルビン尿といった肝機能障害の症状を認めます。
重症になると、肝不全、出血性膵炎、心筋壊死及びショック、代謝性アシドーシス、腎機能障害、DICなどを生じます。
アスピリン(総合感冒薬の成分)
アスピリンも同様に解熱・鎮痛薬として市販されています。
代表的な薬としては「バファリン」などが挙げられます。
アスピリンの急性中毒では、直後にのどや胃の焼けるような痛みと嘔吐。
1〜3時間後に過換気、耳鳴り、難聴、めまい、頭痛、不穏、口渇、下痢が起こります。
嘔吐、過換気、耳鳴りを「アスピリンの3徴」と言うよ。
錯乱、興奮、痙攣などの中枢神経障害及び過高熱を生じることもあるね!
重症の場合は、意識障害、心不全、肺水腫などの循環障害や、呼吸不全、肝・腎機能障害、消化管出血を含む出血傾向、重篤な代謝性アシドーシスを生じます。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬
ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、医療機関における睡眠障害の第一選択薬として最も多く処方されています。
中枢の抑制系神経(GABA受容体)を活性させ、睡眠の導入・維持、鎮静、抗不安、抗痙攣作用を発揮。
内服による急性中毒では、傾眠、構音障害、複視、運動失調などの中枢神経症状を生じ、呼吸・循環障害は比較的軽度。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬は毒性が低く、安全域が広い薬物だよ!
ブロモバレリル尿素系睡眠薬
ブロモバレリル尿素系睡眠薬とは、ブロモバレリル尿素という成分を含む睡眠薬。
ブロモバレリル尿素は、中枢神経を抑制して眠気を促したり、気分を落ち着かせる作用があります。
市販薬でもブロモバレリル尿素系睡眠薬は劇薬に相当する成分だよ!
意識障害、呼吸・循環抑制などの中枢神経抑制が強い睡眠薬。
急性中毒では、呼吸不全及び循環不全を呈します。
オーバードーズ(OD)での救急隊の対応
救急隊の活動としては、ABCDEと併せて環境も評価しましょう。
オーバードーズの傷病者は薬の過量服薬による症状と、環境などの二次的症状を認めます。
環境による症状とは、意識障害があり炎天下のなか何時間も放置による脱水と熱中症。
逆に、気温が低い季節や時間帯、尿失禁があり全身が濡れていると低体温を発症してしまいます。
また、意識障害があり嘔吐すると、気道閉塞に繋がります。
睡眠薬とお酒を同時摂取すると、睡眠薬の効果が通常と比べ強くなります。
意識朦朧状態で嘔吐をすると、窒息の危険性があるので注意しましょう。
救急隊としては、空の薬箱で薬剤の特定、関係者がいれば摂取時間の聴取。
呼吸音と心電図、バイタルサインをしっかり測定し、病院へ情報提供しましょう。
主要参考・引用文献
- 救急救命士 標準テキスト第10版「急性中毒学・環境障害」
- 厚生労働省「第2回 医薬品の販売制度に関する検討会」
[https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001062520.pdf],2023年10月5日閲覧