気道閉塞とは、異物や舌根、喉頭蓋などが気道を塞いで呼吸困難や窒息を引き起こす状態。
このような状態に陥った患者に対して、救急救命士は迅速かつ適切に気道確保を行う必要があります。
救命講習などで異物に対しての処置を指導し熟知していると思いますが、一般市民と救急隊では対応に違いがあります。
今回は気道異物に対しての処置の確認として解説します。
気道異物とは?
気道異物とは、食べ物や小さな物体が誤って気道に入り込んで空気の通り道を塞いでしまうことです。
原因には、食べ物(ピーナッツや枝豆、餅など)、魚の骨、ビニールやプラスチックなどの玩具の部品、乳歯、痰の塊など口に入るもの全てとなります。
気道異物の症状には、突然のむせ込みや咳き込み、喘鳴や呼吸困難、顔色の青白さや紫色化、意識障害や心停止などがあります。
下の写真は「チョークサイン」と言いって、万国交通の窒息しているポーズだよ!
気道異物は子どもに多く見られますが、大人でも起こり得ます。
特に乳児や認知機能が低下した高齢者、嚥下障害のある人は注意が必要。
気道異物の病態
病態として「完全閉塞」または「不完全閉塞」に分けられます。
気道異物「完全閉塞」
完全閉塞の場合、呼吸や会話ができません。
上気道(咽頭・喉頭)での異物が原因での発生が最も多く、気管異物でも生じます。
身体所見として、シーソー呼吸や陥没呼吸といった胸郭運動の異常、チアノーゼを認めます。
シーソー呼吸:上気道閉塞の症状で、胸が上がるとお腹が下がり、胸が下がると腹が上がる状態。
陥没呼吸:息を吸い込むとき胸の一部が陥没する状態。息を吸うときにのどの下(胸骨の上)や鎖骨の上が引っ込む(=陥没する)ようになる。
引用:第9版 救急救命士標準テキスト
以前現場に出た際は、異物除去して1サイクルの胸骨圧迫でROSCしたよ!
気道異物「不完全閉塞」
不完全閉塞の場合、会話、咳、呼吸が可能です。
上気道(咽頭・喉頭)異物では、吸気性喘鳴、ストライダーを認めます。
引用:第9版 救急救命士標準テキスト
身体所見として、シーソー呼吸や陥没呼吸などの胸郭運動異常を認めます。
下気道(気管支)異物では、聴診で笛声音、いびき音など呼気時に聴取。
胸郭運動の左右左などの異常を認めます。
異物に対する救急救命士の対応
気道異物でのCPA
消防署と隣接した建物でない限り、救急隊の接触時はCPAを想定した活動を考えましょう。
接触前に異物を除去した情報が得られないのであれば、口腔内を確認し異物があれば除去。
認めない場合は、人工呼吸し換気抵抗がないかを確認しましょう。
換気抵抗あれば、喉頭展開して気道異物の有無を確認。また、傷病者は気管挿管の適応となります。
基本ではありませんが、異物除去の情報がなければ「口腔内確認→喉頭展開」を先にしていました。
救急隊接触時に意識がある場合
初期評価にて完全閉塞と判断した場合には、背部叩打法及び腹部突き上げ法(胸部突き上げ法)を実施しましょう。
不完全閉塞であれば、高流量での酸素投与を実施し、可能であれば咳を促し搬送。
SpO2値が低下傾向にある場合は、背部叩打法、腹部突き上げ法(胸部突き上げ法)を実施し異物の除去を図ります。
処置中に意識が消失した場合には、胸骨圧迫と併せて喉頭展開などの処置を実施します。
胸骨圧迫の目的は「異物除去」なので脈拍の触知はしないよ!
また、人工呼吸にて換気が可能であれば脈拍を触知し、触れなければ胸骨圧迫を継続。
食事中に気道異物を生じ、胸を掻きむしり苦しがる傷病者を、急性冠症候群と誤認する場合があります。
また、呼吸苦(食事中)=気道異物の考えだけではく、アナフィラキシーなど病態を広く疑いましょう。