V1からV4でST上昇しているから前壁の心筋梗塞かな?
前壁、後壁など梗塞部位を覚えて何か役に立つ?
梗塞部位を覚えることで、この後に予測される症状や処置に繋がるよ!
上記のように、病院の勉強会や普段の訓練で心筋梗塞の梗塞部位の場所を覚えると思います。
しかし、梗塞部位やST上昇の箇所を覚えるだけになっていませんか?
今回は梗塞部位の場所や心電図からこの後に予測される症状などまとめました。
心筋梗塞の梗塞部位
心筋梗塞とは、心臓に血液を送る「冠動脈」という血管が詰まることによって、心臓の筋肉に栄養や酸素が届かなくなり、心臓の筋肉が壊死する病気。
狭くなった血管に血栓が詰まることで発症し、主な原因は、血管が固くなって弾力を失う「動脈硬化」です。
動脈硬化は加齢や高血圧、喫煙習慣、肥満、糖尿病などが原因となって引き起こされます。
冠動脈が血栓などで詰まることで発症するんだね!
次は梗塞部位によってどのような症状、心電図を示すか見てみよう!
引用:循環器内科.com
冠動脈は左冠動脈と右冠動脈に分かれ、左冠動脈は前下行枝と回旋枝に分岐。
梗塞部位によって以下のように心電図に影響します。
冠動脈は心臓の栄養血管で、収縮期に全身に血液を送るのに対し、拡張期に冠動脈へ血液が送られます。
拡張期血圧の維持は冠動脈の血流維持ってことだね!
3つの太い血管、「右冠動脈」「前下行枝」「左回旋枝」のいずれかの血流が途絶えると以下の症状が出現。
冠動脈の梗塞部位ごとの心電図変化に加えて、それぞれの部位の心筋梗塞(MI)に関連する典型的な症状を以下に示します。
一般的な心筋梗塞の症状として、胸痛(多くの場合、胸の中央や左側に強い圧迫感や締め付け感を伴う痛みが発生し、肩、腕、背中、首、顎などに放散することがある)、息切れ、発汗、吐き気、嘔吐、めまい、失神、疲労感。
前壁梗塞(左前下行枝:LADの閉塞)
心電図変化:V1からV4誘導でST上昇が見られます。
関連部位:心臓の前壁、心室中隔。
引用:看護roo!
- 症状
- 強い胸痛(胸の中央部から左側にかけて圧迫感や絞扼感を伴うことが多い)
- 呼吸困難
- 発汗
- 不安感
- 吐き気、嘔吐
下壁を反映する誘導Ⅱ、Ⅲ、aVFで鏡像変化が認められた場合、近位のLADの閉塞と考えられます。
側壁梗塞(左回旋枝:LCXの閉塞)
心電図変化:I、aVL、V5、V6誘導でST上昇が見られます。
関連部位:心臓の側壁。
引用:看護roo!
- 症状:
- 胸の左側に感じる痛み
- 同様の胸痛や圧迫感
- 上記の他の一般的な心筋梗塞症状(呼吸困難、発汗、吐き気など)
下壁梗塞(右冠動脈:RCAの閉塞)
心電図変化:II、III、aVF誘導でST上昇が見られます。
関連部位:心臓の下壁。
引用:看護roo!
- 症状:
- 胸の下部や上腹部の痛み
- 息切れ
- 吐き気、嘔吐
- 徐脈(心拍が遅くなる)
- 迷走神経反応による低血圧や失神
Ⅱ、Ⅲ、aVFは下壁を反映する誘導と言われていますが、後下行枝が支配する領域を反映。
つまり、RCAかLCXのいずれかで梗塞が発生しており、8:1でRCAが優勢と言われています。
LCXでのST上昇は稀なケースだよ!
見分け方として、ST上昇の高さがⅡ<ⅢであればRCA(右冠動脈)。Ⅱ>Ⅲであれば LCX(左回旋枝)と推測できます。
後壁梗塞(右冠動脈:RCAまたは左回旋枝:LCXの閉塞)
心電図変化:V1、V2誘導でR波増高。
関連部位:心臓の後壁。
引用:看護roo!
- 症状
- 背中や肩甲骨間の痛み
- 同様の胸痛や圧迫感
- 上記の他の一般的な心筋梗塞症状
右室梗塞(右冠動脈:RCAの閉塞)
心電図変化: V1、V3R、V4R(右側胸部誘導)でのST上昇が見られます。
関連部位: 右室。
- 症状:
- 右上腹部の痛み
- 首や顎、右腕への放散痛
- 低血圧
- 徐脈→頻脈
- 頸静脈怒張
RCAの#1領域の梗塞では、虚血の直接的な影響により徐脈が先に出現することが多いです。
これは洞房結節や房室結節が虚血状態になるためです。
その後、体が代償機構を働かせたり、交感神経系が亢進することで頻脈が二次的に発生。
また、心筋の興奮性が高まり、心室性不整脈が発生する可能性もあります。
どちらが先に出現するかは個々の病態によって異なるけど、一般的なパターンとしてはこのような順序だよ!
- 洞房結節(SA node)の虚血: RCAが供給する領域に洞房結節が含まれている場合、虚血が直ちに洞房結節の機能を低下させ、洞性徐脈や洞停止が起こることがあります。これにより、早期に徐脈が見られることがあります。
- 房室結節(AV node)の虚血: RCAの#1領域が房室結節に血液を供給している場合、梗塞により房室結節が虚血状態になり、房室ブロックが発生します。これも徐脈の原因となります。
- 代償性頻脈: 心拍出量が低下すると、体は酸素供給を維持するために代償的に心拍数を増加させます。これは初期の虚血後に起こることが多く、徐脈の後に頻脈が現れることがあります。
- 交感神経系の亢進: 心筋梗塞により交感神経系が活性化され、カテコラミンが放出されることで心拍数が増加します。これは体のストレス反応として早期に起こることがありますが、虚血の影響が広範囲に及ぶ場合には徐脈の後に続くことがあります。
- 心室性不整脈: 心筋の興奮性が増加し、心室頻拍や心室細動などの頻脈性不整脈が発生することがあります。これらは生命を脅かす可能性があり、急性期に出現することがあります。
心筋梗塞後の救急救命士の活動
ここまでで、心電図から心筋梗塞の梗塞部位を判別できたと思います。
梗塞部位を判別し救急救命士としてどのような活動に繋げるのか考えましょう。
右冠動脈ですが、こちらは1本で心臓の下側を栄養としています。
血流量は拡張期・収縮期どちらもほとんど一定です。対して、左冠動脈は2本で、右冠動脈よりも太いです。
また、左冠動脈のほうが心室壁の厚い左室に分布しているため、拡張期に心筋が弛緩することで多くの血液が流れます。
このため、右冠動脈が閉塞を起こしても、右冠動脈が支配している領域の心筋の厚みは薄いため、心臓内の血液酸素はある程度浸透させることができます。
右冠動脈が閉塞しても症状は比較的軽いことが多く、悪心や嘔吐、吐き気などの消化器症状が出現しやすいのが特徴です。
また、右冠動脈でも#1に閉塞がみられると、横隔膜と接している心臓の左室面が梗塞を起こします。そのため、上腹部痛や心窩部痛といった症状も現れやすいのが特徴。
一方、左冠動脈が閉塞すると、どのような症状が出現するのか確認していきたいと思います。
左冠動脈でも#5や#6が閉塞すると、この支配領域は広範囲に及ぶため、極めて強く急激な胸痛、意識障害やショックといった重篤な症状が現れやすいのが特徴です。
左冠動脈閉塞のほうが後遺症が生じやすく、慢性心不全や左室拡大などがみられます。
最近では、「心原性問わずショックであれば輸液を開始しても良い」地域もあり急速輸液か維持輸液かを判断する目安になるでしょう。
右冠動脈の高速から右室梗塞、右不全を起こすと左心房に十分な血液を送り出すことができないので急速輸液が必要になります。
右心の十分な収縮がなくても輸液することでボリュームが増えて血液を繰り出せるね!
左心不全に対して急速輸液を実施すると、全負荷が大きくなり心筋収縮力が限界を超えてしまい対応できなくなり、血圧低下・頻脈・肺水腫などの心不全症状が引き起こされます。
また、体位管理に関しても右心不全→仰臥位、左心不全→坐位など心電図を通しても知ることができるでしょう。
多くの患者は楽な姿勢を取るので接触時体位も参考に!