救急救命士の血糖測定及びブドウ糖投与ができるようになり、意識障害のある傷病者に対しての鑑別ができるようになりました。
現場で血糖測定する際に気をつけている事はと聞くと、「くも膜下出血に対して血糖測定しないこと」、「右半身麻痺があれば低血糖を疑う」という回答が得られました。
最近の右半身麻痺に対しての考えは、「右半身麻痺 = 低血糖 or 脳卒中」という考えが強いように感じます。
確かに院内でも、tPA療法をする前に血糖測定を実施します。
しかし、「右半身麻痺 = 低血糖 or 脳卒中」だと致命的なミスをする恐れがあるので、+で大動脈解離まで覚えておきましょう。
今回は、右半身麻痺に関する考え方を記事にしました。
大動脈解離について詳しく知りたい方は過去記事を読んでください→「大動脈解離の救急救命士による評価と病態把握について詳しく解説!」
低血糖について詳しく知りたい方は過去記事を読んでください→「低血糖の症状と対処法!救急救命士が現場実施する特定行為について!」
片麻痺は脳卒中・低血糖だけではない!
院内でのrt-PA治療の前に行っていること!
- スタンフォードA型の大動脈解離で“片麻痺”を認める症状あり。
- t-PA療法を開始する前に“胸部大動脈解離の有無”、“低血糖・高血糖”がないかを判断。
大動脈解離は知っての通り、解離する場所により症状が多彩な疾患です。
スタンフォードA型の大動脈解離で“片麻痺”を認める症状があります。また、神経症状が主症状の大動脈解離だと特徴的な初見である胸痛を訴えないこともあります。
2019年3月に出された「静注血栓溶解(rt-PA)療法 適正治療指針 第三版」によると、rt-PA療法を開始する前に“胸部大動脈解離の有無”、“低血糖・高血糖”がないかを判断します。
引用:静注血栓溶解(rt-PA)療法 適正治療指針 第三版(一部抜粋)
日本でも、rt-PA療法が承認されて間もないころ、胸部大動脈解離の合併に気づかずこの治療を受けた患者の死亡も報告されています。
似ている症状があると間違いやすいね!日頃から病態の把握に努めよう!
低血糖 | 空腹感 冷汗 手の震え 動悸 嘔気 頭痛 意識障害 痙攣 失神 目のかすみ 片麻痺 |
脳卒中 | 顔のゆがみ 呂律難 片麻痺 頭痛 痙攣 動悸 めまい 嘔気 嘔吐 視野異常…etc |
大動脈解離 | 冷汗 ショック症状 胸痛 背部痛 徐脈 心不全 めまい 心タンポナーデ 片麻痺 痙攣 意識障害 失神…etc |
上記表のように、“低血糖”、“脳卒中”、“大動脈解離”で共通する症状があります。
傷病者の利益を優先するには?
- 適切な時間での搬送。
- 適切な病院に搬送。
- 質の高い情報聴取、観察が必須。
片麻痺、意識障害を主症状とした傷病者を救急搬送する際、救急隊による“ワイドトリアージ”が重要になってきます。
選定した病院により大血管の治療ができなかったり、脳外科を専門にしていなかったりします。
患者の利益を優先する場合、どちらも対応できる病院を選定するか、救急隊による質の高い観察が求められます。
仮にrt-PA療法が必要な患者であれば、発症から4.5時間以内に治療(来院してから少なとも1時間以内)が推奨。
治療開始までに、院内でMRIや問診、バイタル測定、同意書への記入、現病既往歴の確認などが行われ治療までに時間を費やします。
1秒でも早く治療を開始させたいのであれば救急隊による質の高い観察、問診をすることで治療を早めることができます。
そのためには病院実習などで、その病院の治療までの流れを確認して活動に取り入れましょう。
引用:静注血栓溶解(rt-PA)療法 適正治療指針 第三版(1部抜粋)
他にも「2週間以内に頭部外傷がなかったか」、「心電図でAfを認めるか」、「共同偏視はあるか」など救急隊で取れる情報、所見など多くあり治療までの時間短縮を図れます。
救急隊ができる活動
救急隊の活動!
- 質の高いトリアージを実施。
- 病院がどんなに近くても2ed-Callをするようにしましょう。
片麻痺に対して、緊急度・重症度が高い疾患を疑いましょう。例として、片麻痺=低血糖、脳卒中、大動脈解離など挙げられます。
所見から、まずはショック症状がないか?血圧の左右差がないかなど代表的な症状を確認しましょう。
情報聴取として、発症時に痛みはなかったか?現病既往など聴取しましょう。
意識障害を呈している場合には、典型的な自覚症状を聴取できないことからワイドの疾患を疑い、病院選定することが重要になります。
そのため、日頃から症状に対する疾患お紐付けなど行い、余裕があればどうしてこの症状が出るのか勉強しましょう。
また、1st-Call時には取れていなかった情報はできるだけ2ed-Callで伝えましょう。
病院到着まで残り2分だったとしても、その情報が早く伝わることで“1分”時間短縮を図れるからです。
情報は武器だから有用な情報はいち早く届けよう!