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低血糖の症状と対処法!救急救命士が現場実施する特定行為について!

低血糖の症状 救急救命士
低血糖の症状
この記事の重要ポイント!
  • 低血糖の症状は“はひふへほ”で覚える!
  • 血糖値の正常範囲は70〜109mg/dl。
  • 日本人のほとんどの人が優位半球は左のため片麻痺は右が多い。
  • 低血糖発作を起こしやすい原因は、薬の変更、栄養摂取不足、血糖降下薬の過剰摂取、肝不全、胃切除、肝不全、シックデイ、インスリノーマ等がある。
  • 血糖測定の目安はJCS≧10、つまりJCSⅠ−3でも測定可能。
  • 血糖測定及びブドウ糖投与の際は腕をしっかり固定する。
  • ブドウ糖投与は100秒(1目盛5秒)で投与すると時間管理しやすい。

プレホスピタル・ケアにおける低血糖発作症例に対しての“血糖測定”及び“ブドウ糖投与”の実施が平成26年4月1日から始まりました。

これまでは、低血糖発作症例に対して救急隊ができることは早期に搬送することだけでしたが、上記の処置ができるようになり傷病者の救命率の向上や後遺症の軽減に努めることができます。

しかし、現場でできることが増えた分、救急救命士の質が問われるようになり、現在では意識障害(くも膜下出血除く)の鑑別のために血糖測定があったりと負担が増えています。

救急救命士は病院実習や2年間で100時間を超える勉強を義務付けられていますが、他隊員はそうではありません。

今回は低血糖とそれに付随する特定行為について再度勉強するための記事になります。現場は隊での活動となるため救急救命士以外の隊員でも役立ててもらいたいと思っています。

また、救急救命士は常に復習しないとその知識が錆びついてくるので知識の再確認してください。

低血糖に関する基礎知識!

現場で使える重要な知識!

  • 血糖値の正常範囲は70〜109mg/dl。
  • 中枢神経はブドウ糖を主なエネルギー源としており、低血糖になると強くその影響を受ける。
  • 低血糖の症状は“はひふへほ”で覚える。
  • 日本人のほとんどの人が優位半球は左のため片麻痺は右が多い。

血糖値は普段70〜109mg/dlの範囲にあります。この範囲より血糖値が下がることを“低血糖”と言います。

中枢神経はブドウ糖を主なエネルギー源としており、低血糖になると強くその影響を受けます。

低血糖になると様々な症状が出現します。空腹感や発汗、動悸、麻痺など症状が多岐に渡ります。

血糖を上げるためにアドレナリンやノルアドレナリンなどのホルモンを分泌させ血糖値を上げようとします。

その結果として、発汗、振戦、動悸、頭痛、顔面蒼白などの交感神経症状が出現。

さらに症状が進行すると、中枢神経症状として眠気、脱力、めまい、見当識低下、片麻痺、痙攣、意識レベル低下、昏睡などきたします。

血糖値と症状についての表を下記にまとめました。

血糖値
(mg/dl)
症状
70未満空腹感 欠伸 悪心
55未満発汗 振戦 動悸 頻脈 熱感 頭痛 顔面蒼白 攻撃的言動
眠気 脱力 めまい 疲労感 集中力低下 霧視 見当識低下
30未満片麻痺 意識レベル低下 痙攣 昏睡 死
血糖値と症状

現場レベルで上記症状すべてを覚えるのは大変なので“低血糖のはひふへほ”で症状を覚えましょう。

低血糖発作の“はひふへほ”

  • :はらが減る
  • :ひや汗
  • :ふるえ
  • :へんにドキドキ(動悸)
  • :ほっとくと失神
qqyoshi
qqyoshi

発汗、頻脈、冷汗、顔面蒼白が出てるとショックと勘違いしやすいので、通報内容、病歴、橈骨充実で循環が維持されているかしっかり確認しよう!

突然の片麻痺の原因疾患は4つで、脳梗塞、脳出血、低血糖、痙攣後のトッド麻痺が挙げられます。

低血糖で片麻痺が起こる理由は、左右の大脳半球で血糖に対する閾値が違うからです。つまり、優位半球と劣位半球では血糖に対する閾値が違うため、同じ血糖値でも優位半球に症状が出やすくなります。

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日本人はほとんどが左のに優位半球が存在するため、片麻痺が右側に見られることが多いです。

意識障害、片麻痺なく僅かな言語障害のみの場合も低血糖を疑いましょう

どんな人が低血糖を起こしやすい?

低血糖を起こしやすい原因!

  • 薬の変更
  • 栄養摂取不足
  • 血糖降下薬の過剰摂取
  • 肝不全
  • 胃切除(ダンピング)
  • 肝不全
  • シックデイ
  • インスリノーマ(膵臓の細胞の腫瘍化)

低血糖発作を起こしやすい原因の代表として、“薬の変更”、“栄養摂取不足”、“血糖降下薬の過剰摂取”、“肝不全”、“胃切除(ダンピング)”、“肝不全”、“シックデイ”、“インスリノーマ(膵臓の細胞の腫瘍化)”が挙げられます。

栄養摂取不足 胃切除(ダンピング) シックデイ

低血糖を起こす背景として、“食事の量が少なかった”、“食事を抜いた”、“運動量がいつもより多かった”などのエピソードがあります。

また、胃切除(ダンピング)により食事量が低下、または食事量が低下しているにも関わらず以前と同じ量の血糖降下薬の使用などがあります。

糖尿病の方が風邪を引き具合が悪くなることで、食事が食べられなかったりすると、血糖値を下げる薬の調整が必要になります。

これを“シックデイ”と呼びます。

この状態では高血糖になりやすかったり、食事を取らないことで低血糖に陥る可能性があります。

Bitly

肝不全

肝不全では血糖値が下がっても肝臓でブドウ糖があまり作られないため低血糖になります。

インスリノーマ(膵臓の細胞の腫瘍化)

インスリンを分泌するβ細胞の腫瘍(インスリノーマ)やインスリン自己免疫症候群などでは、インスリンが過剰に分泌されて低血糖が引き起こされます。

qqyoshi
qqyoshi

上記のエピソード、現病・既往歴がないか確認することで、低血糖での意識障害か鑑別の一助になるね!

救急救命士が行う処置!

低血糖発作の際に救急救命士が実施できる処置として“血糖測定(包括的指示)”と“ブドウ糖投与(具体的指示)”があります。

実際に現場で実施する際の方法と注意点を以下にまとめました。

今回に限らず救急隊が何かアクションを起こす際は、家族や関係者に十分な説明と同意を得ましょう。

血糖測定

血糖測定の適応

  • 意識障害(JCS≧10を目安とする)を認める場合。
  • 血糖測定を行うことによって意識障害の判別や搬送先の選定などに利益があると判断される場合。

血糖測定禁忌

  • 突然発症した激しい頭痛の後に意識障害を呈した場合など、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血が疑われる例。
  • 血糖を低下させる薬剤を使用している傷病者であっても、高エネルギー外傷(事故)などの現病歴があり,頭部外傷を伴っている例など。
qqyoshi
qqyoshi

意識障害はJCS≧10を目安ということが重要だね!つまりJCSⅠ−3でも大丈夫!

血糖測定の部位

測定する部位として指先の手掌面(通常)、指先が冷たい場合は手掌耳朶などを触り、一番温かい部位を穿刺部としてもよいとされています。

針の長さは3〜4が標準的となっているので、傷病者の指を見て判断しましょう。

血糖測定の部位は中指、環指をなどの指を原則とします。

母子、示指、中指は人がものを掴むときなどに使用される指のため、傷病者が食べ物を触っていた場合、測定結果が症状とそぐわない可能性があるので注意。

血糖測定の部位

針の延長線上に指を添えると針刺し事故の原因になります。

機器は各消防本部、医療機関、その他関係機関により異なるので操作方法は省きます。

静脈路確保の補助

傷病者は意識障害はあるが、JCSⅢ-300(E1V1M1)ではないので痛みに反応し逃避する可能性があります。

その際、針刺し事故や血液感染など起こってしまうのでしっかり腕を固定しましょう。

抑える位置は肩、手首付近の関節。

測定に必要な血液量

血液は必要以上に搾り出すと、組織液など血液以外の液体が混ざることがあります。

穿刺の前に十分にうっ血させることが重要になります。

血糖測定の結果が50mg/dl未満で15歳以上(推定含む)であれば、地域のプロトコールに従いブドウ糖投与を実施します。

低血糖に対しブドウ糖を投与しても意識レベルが改善しない場合や、いったん意識レベルが回復しても再度意識レベルが低下した場合などには、医師の指示に従い再度血糖値を測定することがあります

ブドウ糖投与

ブドウ糖投与適応

  • 血糖値50mg/dl未満である。
  • 15歳以上である(推定含む)。
ブドウ糖投薬

救急隊が使用するブドウ糖は、20mlの50%ブドウ糖注射液になります。

投与は20mlを1〜2分かけて1本投与。 1本目が終わったら2本目の投与を開始し、合計40ml投与を原則とします。

qqyoshi
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ブドウ糖投与は1目盛5秒、100秒かけて投与すると時間管理しやすいかも!補助の隊員が100秒数えることで把握しやすいね!

しかし、中には 1本目を投与すると意識が回復する傷病者もいます。しかし、それは一時的ですぐにレベル低下が起こるので注意が必要です。

必要に応じ減量しても大丈夫ですが、救急隊で判断できな場合はオンラインで医師に指示を仰ぎましょう。

ブドウ糖注射液は生理食塩液に比べ約12倍の浸透圧を有しているため、投与時は血管痛をきたします。そのため、投与する際はしっかり腕を固定して実施しましょう。

正しい知識、正しい技術を身につけ質の高い救急医療を提供できるよう頑張りましょう!

参考資料:「PDMA医療安全情報」「第10版救急救命士標準テキスト」

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