- ショックとは循環不全のための組織への酸素や栄養基質の供給が不十分になった病態の総称。
- 循環血液量減少性ショックでは、足りない血液分を、心拍数、呼吸数など増加させることで補填。
- 高齢者・運動選手・β遮断薬服用者・妊婦はショックに対する反応が乏しいので注意。
- 外出血に輸液すると“血液希釈”、“低体温”、“凝固障害”を引き起こす。
- ショックに対する輸液処置で乳酸リンゲル液1,000mlを静脈内に投与すると、3/4は間質(血漿と間質の細胞外液)に広がり、1/4はが血管内にとどまります。
- 外出血に対する輸液は、外傷に対する病院前での輸液の目安を参考に実施する。
現場で遭遇する機会の多い循環血液量減少性ショック。
循環血液量減少性ショックに1番重要なことは“根本的治療”になります。近年、救急救命士の処置拡大により実施できることがかなり広がりました。
しかし、結果として現場で処置をするかどうかなど判断を迫られ搬送がそ遅くなったり、病態鑑別のために現場滞在時間が長くなる傾向にあります。
傷病者に最大限のメリットを還元できるように、再度ショックに対しての病態・処置・判断について復習しましょう。
ショック輸液に関しての考え方やショック鑑別方法、注意点などまとめています。
ショックの定義
ショックとは循環不全のための組織への酸素や栄養基質の供給が不十分になった病態の総称。
ショックは「循環血液量減少性ショック」「心原性ショック」「血液分布異常性ショック」「心外閉塞・拘束性ショック」の4つに分類されます。
循環血液量減少性ショックとは何か?

循環血液量減少性ショックとは
何らかの原因により循環血液が減少することで、心臓に戻る血液量と心臓から送り出される血液が減少。心拍数の増加によって代償されない限り、心拍出料は減少します。
原因で1番多いのが出血性ショック。その他の原因として“消化管出血”、“嘔吐・下痢”、“脱水”、“熱傷”などがあります。
また、偶発性低体温症や著しい高血糖状態では尿細管からの水分の再吸収が阻害され脱水になります。
ショックに対する代償反応
代償反応とは、身体機能の一部が失われた場合など、本来その機能を果たす部位とは別の部位が、その機能を補完するように機能することを指します。
循環血液量減少性ショックであれば、心臓から送る血液がないので、末梢血管の抵抗をあげ脈拍数、呼吸数を早くし足りない分を補填。
ショックの進行とともに血圧維持ができなくなります。この状態を“代償の破綻”と言います。
代償が破綻すると呼吸数、脈拍数、血圧など全ての機能が低下するためすぐにCPAに移行します。

救急隊は代償が破綻しないように早期に必要な処置、早期病院搬送が必要だね!
高齢者・妊婦・運動選手・β遮断薬服用者には要注意!

- 高齢者・運動選手・β遮断薬服用者・妊婦はショックに対する反応が乏しい。
通常、循環血液量減少性ショックに対する代償反応として、低下した静脈還流量(心臓に戻る血液)及び1回拍出量(左心室から打ち出される血液量)を補うために心拍数と末梢血管抵抗が増加します。
しかし、高齢者・妊婦・運動選手・β遮断薬服用者に関してはそうではありません。
高齢者・運動選手・β遮断薬服用者はカテコラミンに対する反応性の低下や副交感神経系の相対的緊張のために典型的な変化がみられず、かなり出血していても頻脈をきたし にくいことがあります。
妊娠中は循環血漿量が増加し、体内の血液量が増えいるため出血していも代償反応が乏しくなるためアンダートリアージにならないよう注意が必要です。
また、妊婦は正常でも血圧の低下と頻脈が見られることもあり、出血の症状と間違うこともあります。

妊娠することで、血液量は増えても赤血球は増えてないということだね!
ショック指数
ショック指数とは、出血性ショック(循環血液量減少性ショック)の初期評価に用いる指標です。
求め方は、【ショック指数(SI) = 心拍数 / 収縮期血圧】
ショック指数が0.5であれば正常。1.0であれば軽症。1.5であれば中等症。2.0以上は重症となります。
正常 | 軽症 | 中等症 | 重症 | |
---|---|---|---|---|
Shock Index | 0.5 | 1.0 | 1.5 | 2.0 |
出血性ショックの重症度分類SI 出血量・所見
ClassⅠ | ClassⅡ | ClassⅢ | ClassⅣ | |
---|---|---|---|---|
Shock Index | 0.5 | 1.0 | 1.5 | 2.0 |
推定出血量(ml) | 750ml未満 | 750〜1,500ml | 1,500〜2,000ml | 2,000以上 |
推定出血量(%) | 15未満 | 15〜30 | 30〜40 | 40以上 |
心拍数(回/分) | 100未満 | 100〜120 | 120〜140 | 140以上 |
収縮期血圧 | 正常(不変) | 正常(不変) | 低下 | 低下 |
症状・所見 | なし 軽度の不安 | 頻脈 蒼白 冷汗 | 呼吸促迫 乏尿 | 意識障害 無尿 |
妊婦のショック指数が“1”の場合は約1.5L、指数が“1.5”の場合は2.5Lの出血があると考えましょう。
救急隊の活動

救急隊の活動でおさえておきたいポイント!
- ショックは身体的所見で早期に評価できる。
- 外出血に輸液すると“血液希釈”、“加温されていない輸液処置での低体温”、“凝固障害”を引き起こす。
- 根本的治療を遅らせないために搬送を優先。
ショックの分類は4つしかなありません。救急隊は接触時の初期評価でショック徴候がないかを確認しましょう。
ショック症状というのはバイタルサインなどの数字的な評価よりも、呼吸数や皮膚所見、橈骨動脈などの身体的所見の方が早く出ます。
そのため、4つのショックの身体的所見を覚えることで早期判断することができます。
4つのショックの特徴と判別のための手がかりが以下になります。


救急隊の活動として、外出血があれば早期に止血し、酸素投与、体位管理、保温、バイタル測定、早期搬送を心掛けましょう。
救急救命士の特定行為として静脈路確保し輸液を行うことができます。
しかし、外出血であれば“血液希釈”、“加温されていない輸液処置での低体温”、“凝固障害”を引き起こす可能性があることも覚えておきましょう。
輸液することで上記のデメリットが発生するだけでなく、現場で実施してしまうと搬送と傷病者への“根本的治療”が遅れ、取り返しのつかないことになるので搬送最優先で活動しましょう。
循環血液量減少性ショックに対するショック輸液

ショックに対する輸液処置で乳酸リンゲル液1,000mlを静脈内に投与すると、3/4は間質(血漿と間質の細胞外液)に広がり、1/4はが血管内にとどまります。
出血量に見合った循環血液量を補うためには、出血量の4倍の輸液が必要になります。
足りない血液分を補充するだけであれば輸液処置して終わりですが、外傷性の出血性ショックの場合は話が変わってきます。
前述した通り、過剰な輸液で血液希釈、低体温、凝固障害を引き起こす可能性があります。
外傷に対する病院前での輸液の目安を参考に実施しましょう。
- 橈骨動脈が触知できる程度を目標に輸液量を調整。過量の輸液を避ける。
- 穿通性外傷で搬送時間が30分未満の場合には、患者の橈骨動脈が触れる間は病院前の輸液は保留。
- しっかりとした意識状態で、橈骨動脈の触知を保つための250mlの輸液を行う。
- 頭部外傷がある場合には、収縮期血圧90mmHg以上、または平均血圧60mmHgを保つよう輸液量を調整。

ショックがあるから“輸液”ではダメなんだね!
内因性の出血は、出血箇所が一箇所のみのことが多く、胃。十二指腸潰瘍からの出血であれば止血も容易です。
そのため、血圧維持のための輸液を考慮しても大丈夫です。
静脈路確保に関しては過去記事を参考にしてください→「知らない人が多い、救急救命士の静脈路確保(IV確保)の成功率を上げるための必須知識!」