救急隊のできる基本処置として、“酸素投与”、“体位管理”、“保温”がありまが、この中で保温処置について皆さんはどこまでしっかりできていますか?
私が救急現場に居た際は、保温は毛布を掛けるだけで終わっていました。
現場に向かう途中に、ストレッチャーに毛布やアルミックシートをセッティングしたりなどやったこともありませんでした。
しかし、保温について勉強すると、基本処置ということもありとても重要な役割を果たしていました。
今回は保温することの重要性と効果をまとめました。
保温とは?
- 保温とは、体温低下を防止する目的で実施する処置です。
人の体温は深部体温が最も高く、表層に近づくにつれ温度は低くなり、体表及び呼吸から熱喪失が起こっています。
保温処置することで、体表面からの放熱を防ぐ効果があります。
プレウォーミング
- 低体温になることで感染率の上昇や、肝臓の代謝機能低下、血液凝固機能の低下が発生。
プレウォーミングとは術前加温のことになります。
手術前の患者に対して麻酔導入前までに加温し一定の温度を保つことを目的としています。
患者だけに加温するのではなく、手術室のベッドも予め加温し体温喪失を防いでいます。
手術中において低体温は悪影響をもたらします。感染率の上昇や、肝臓の代謝機能低下、血液凝固機能の低下など挙げられます。
感染率の上昇
手術中の低体温が原因で、手術部位(創部)の感染率が高くなると言われています。
肝臓の代謝機能低下
低体温が起こることで、肝臓の代謝機能が低下し麻酔の成分が分解されずに覚醒に時間がかかってまうこともあります。
血液凝固機能の低下
低体温が原因で血液の凝固機能が低下します。つまり、出血のリスクが高くなる訳です。
その他にも体温が低下することで、シバリングが発生し酸素消費が増えたりと患者にとって悪影響を及ぼします。
つまり、院内でも患者の体温管理というのはとても重要視されているね!
現場で実施する保温の仕方
- 深部体温を1度上昇させるのに、体表面の温度を5度上昇させる必要がある。
- 外傷性性出血で不可逆的なショック起こると、“アシドーシス”、“血液凝固障害”、“低体温”が生じる。
- 保温処置というのは毛布を上から被せるだけではなく、背面から全身を覆うこと。
自隊で救急に出動した際や、病院実習で運ばれてくる傷病者を見ますが、多くの救急隊の保温がただ毛布を掛けただけのことが多いです。
救急隊の処置には加温が含まれていないため、一度喪失した体温を取り戻すのは容易ではありません。
それがショックや偶発性低体温症であればなおさらです。
さらに近年では、深部体温を1度上昇させるのに、体表面の温度を5度上昇させる必要がある言われるほど加温は非効率です(数字はうる覚えです…)。
加温より保温の方が効率が良いね!だから基本は“保温”なんだね!
体温が低下するとどうなる?
外傷性性出血で不可逆的なショック起こると、“アシドーシス”、“血液凝固障害”、“低体温”が生じます。
血液凝固障害が起こることで、DICの併発や輸液処置による血液希釈等により、さらなる出血を助長させます。
さらに低体温が加わることで、血液凝固障害を助長し止血をより困難にします。
体温低下 → 輸液 → 血液凝固障害という悪循環に陥ります。
外傷以外でもショック患者に対して保温することでシバリングを防止することで、酸素消費を増やさない役割があります。
また、偶発性低体温症、熱傷、出産など様々な場面で保温処置が必要になります。
救急現場での保温の仕方!
救急隊の保温処置には“アルミックシートでの保温”、“毛布での保温”、“車内の暖房”、“濡れている衣服を脱がす”、“濡れている体表面を拭く”などあります。
保温処置というのは毛布を上から被せるだけではなく、背面から全身を覆うことを言います。
また、アルミックシートには次のような効果があります。
- シートの「金色面を外側」にして身体をくるむと「保温効果」があります。
- シートの「銀色面を外側」にして身体をくるみと「防暑・断熱の効果」があります。
引用:イワツキ/救急アルミックシート/滅菌救急アルミックシート
救急現場から保温処置せずに搬送した際に、医療機関で加温しなければなりません。前述したとおり、加温はかなり非効率のため、医療機関はかなり困ります。
適切な医療機関に、適切な処置をして搬送することが救急隊の役割でもあります。少しでも患者の悪化を防ぎ、引き継ぎをスムーズにするために基本の“保温”をしっかり実施しましょう。
適切な処置ができるように資機材の把握も必要だね!